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Review 浸透したプレー原則、ゴールのイメージ、そして戦術変更~矢島輝一、平川怜、安間貴義トップチームコーチ兼FC東京U-23監督【J3第30節】

 

 
◆思想が明確にあらわれた一戦

 10人のうち何人のフィールドプレーヤーをどの場所に置いても自由であり、似たようなシチュエーションは発生しても厳密には二度と同じ場面のないサッカーは、その自由度の高さ故に、どういう思想でゲームに臨むのかを決めておかなくてはならない。
 具体的にはそれがフォーメーション、ボールの奪いどころや奪い方、パスルートの構築といったシステムとして表現されるが、そうした規定の範囲内で「こういうときにはこうしようぜ」と、プレーの方向性も定まってくる。
 それを、FC東京U-23が立ち上がった2016年に安間貴義トップチームコーチ兼FC東京U-23監督は「プレー原則」と言っていたように思う。そしてグルージャ盛岡を破ったJ3第30節には、そのプレー原則が浸透していると感じさせられる場面がいくつかあった。安間監督が言う若手の成長によりオーバーエイジとの実力ギャップが埋められ、チームとして機能するようになり、6試合負けなしで勝点を積み重ねている背景には、そうした熟成があるのではないか。
 セカンドハーフからのフォーメーション変更によりゲームの様相を一変させたベンチワークと合わせ、非常に見応えのある一戦だった。

◆グルージャ盛岡の戦いぶり

 リーグワーストの最多失点がたたって順位が低いグルージャ盛岡だが、それは冒頭に述べた思想のあらわれでもあるだろう。端的には、盛岡は攻撃重視。ボールを持ったときに面白みがあるチームだ。
 前半4分、セットプレーの流れから前に選手が残っておりコンパクトな陣形で近い距離感を維持していた盛岡は、小谷光毅のシュートで東京をひやりとさせる。
 序盤は比較的身体能力の高い東京が圧倒していたが、そのあとに、コレクティヴにパスをつなぐスタイルで反撃してみせた盛岡は“やるな”という印象だった。
 基本3-4-2-1の盛岡は、規則的な4-4-2の東京と組み合ったときにギャップをつくりやすい。そのマッチングも盛岡に有利だった。
 盛岡は、守っては5-4-1。この「5-4」に東京の選手は入りきれず、散発的な攻撃にとどまった。それでも東京は前半42分、守備ブロックの手前で前田遼一が富樫敬真からのパスをもらい、チャージを受けながらも左横の品田愛斗へつないだシーンは見事だった。品田はペナルティエリア手前の中央から右足でダイレクトシュートを放つが、このゴール右上へ向かったボールは盛岡ゴールキーパーの小泉勇人にセーブされてしまう。前半10分にあった、、高い位置でボールを奪い返したあとの流れで柳貴博のスルーパスに内田宅哉が飛び出してクロス、そのファーに流れたボールを拾ってジャキットもクロス、ブロックされて左コーナーキック――というシーンの連動もよかった。

 しかし繰り返しになるがこうしたチャンスは散発的で、東京が制圧していたわけではない。高い位置からかけてくる盛岡のプレッシャーに圧され、後退してしまう場面も度々あった。その意味では守備でがんばり、無失点で折り返したことが、最終的に東京の勝利につながったとも言えるだろう。右手1本で相手のシュートを弾くなどの活躍を見せた波多野豪や前節につづいて好調の山田将之など、守備陣のふんばりが実った。

◆プレー原則とフォーメーション変更

 さてプレー原則だが、これを率先して示していたのが、

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