FC東京の10選手が入院中の子どもたちとふれあい~中村拓海の場合【社会連携活動/東京都立小児総合医療センター訪問/無料公開】
10月16日、FC東京の選手たち10人(背番号順に児玉剛、森重真人、宮崎幾笑、中村拓海、小川諒也、田川亨介、内田宅哉、岡崎慎、鈴木喜丈、品田愛斗)が府中市にある東京都立小児総合医療センターを訪れ、病棟を巡回し、入院中の子どもたちとふれあった。肩に手を回し手を握り、直に接し、話し、ともに写真に写り、サインとプレゼントの品を渡し、じっくりと午後の時間を過ごした。
ふだんはピッチ内で健康な活力を示し、観る者に感動を与えるサッカー選手にできるピッチ外の社会貢献とは、その前向きな力で少しでも人々の支えとなり手伝えることを探すことだろう。東京の選手たちは福島での復興支援活動以外にも多くの社会連携活動、地域活動をおこなっているが、そのひとつが、この病棟訪問。階数表示が「森のフロア」だったり、時計の告げる時報が、動物たちが乱舞する機械仕掛けであったり。優しげなつくりの小児総合医療センターで疾病とともに生きる子どもたちにとって選手たちの訪問はことのほか嬉しいもののようだった。遠慮も気後れもなく接してくる子どもたちに、選手たちもおおらかに応え、抱きかかえ、ざっくばらんに喋った。強く優しい東京の男たちは好意的に迎えられ、癒やしとなっていた。
◆FC東京の一員としての自覚を増す中村拓海
疲れたようでもあり、それでいて充実したようでもあり、照れているのか高揚しているのか、複雑な表情をしていたのは、加入一年目のルーキー中村拓海。その表情の理由が、話を聞くうちにわかってきた。
ともに病棟を回った児玉剛は、齢31を数える立派なおとな。ごく自然に子どもたちとふれあっていたが、その様子に比べると中村は自身がうまく接することができていなかったと感じたようだ。
「そういう子どもたちと、いままでふれあうことがなかった。ダマさんたちは慣れているからふつうに喋れるんですけど、自分はどういうふうに接したらいいかがまだよくわからず、そういうところが勉強になったし、子どもたちの笑顔を見ることができてよかったと思います。
(子どもたちの間に入っていくのが難しい?)これはもう、年の差というか経験の差で。これからこういう機会にいっぱい経験を積むことで、喋れるようになると思います」
病床にいる子どもたちと同じ時間を過ごすことで考えるところがあったようで、中村はいつにも増して雄弁だった。
「(病気での入院は経験がない?)ないですね……だから入院している子どもたちの気持ちはどうなのだろうとも思ったし、勇気づけられたらいいなと思いながらふれあっていました」
まだプロ一年目であり、シーズンを通してどのくらいの頻度で社会連携活動や地域活動をしているのかその全貌を肌身でわかっているわけではないが、街へと分け入るその回数が多いとは感じている。
「こんなにいろいろなところに行くのかと。今後も地域活動が度々あると聞いていて、ちゃんとそういうことをするクラブなのだなと思いました。その点、FC東京にいるというところでの影響力はあるんだなと、つくづく思います。こういう活動をしていて、ユニフォームを着て外に出れば『あ、FC東京だ』と言われるから、自覚を持たないとなと、あらためて思わされました」
グラウンドに戻れば、原大智と同様、個人能力を伸ばす特訓組になる。自らを伸ばし、このクラブにふさわしくあるよう、日々向上のための努力を重ねている。
「テツさん(長澤徹コーチ)もユキさん(佐藤由紀彦コーチ)も、いま眼の前のことだけじゃなく先のことも考えていろいろ自分たちに言ってくれる。ユキさんは実演してくれるのでそれもすごくありがたい。わかりやすくて巧いので、ほんとうにやりやすいなと感じます」
小平で注ぎ注がれる情熱によってすくすくと成長する中村。その己自身をピッチの外でもさらけ出し世に貢献することで、よりいっそうの成長を遂げつつあるようだ。
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