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【山形vs名古屋】レポート:終了間際に萬代宏樹の劇的ドロー弾。それでも石﨑信弘監督の表情が晴れない理由。

■Jリーグヤマザキナビスコカップ 予選リーグ 第3節
4月8日(水)山形 3-3 名古屋(19:04KICK OFF/NDスタ/3,558人)
得点者:8’竹内彬(名古屋)40’當間建文(山形)49’矢田旭(名古屋)56′ 當間建文(山形)63’ノヴァコヴィッチ(名古屋)90’+2 萬代宏樹(山形)
公式記録(山形公式)
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直近のリーグ戦・湘南とのホームゲームから中3日。連戦となったのはGK山岸範宏とCBの石川竜也、西河翔吾、當間建文の3人だけで、先発7人を入れ替えて臨んだ一戦である。迎えた名古屋は3日に行われたG大阪戦からGK楢﨑正剛ら4人が替わったとはいえ、強力な外国人と日本代表クラスのタレントを揃えたメンバー。3-3、しかも終了間際に追いついてのドローという結果だけを見れば、上出来の評価をしたいところだ。けれども、試合後の会見場に現れた石﨑信弘監督も、ミックスゾーンを通り過ぎる選手たちも、その表情は晴れなかった。

「試合の入り方は十分ケアするようにと言ったのだが、相手の勢いに押しこまれてしまい、イージーなミスから失点してしまった」

上に挙げた石﨑監督のコメントは、実は名古屋戦後のものではなく、4日前の湘南戦後のもの。つまり、この試合を迎えるにあたっての重要な修正点として気をつけていたはずの「試合の入り方」で、また同じ轍を踏んだことになる。

この日の失点は前半8分のことだった。ビルドアップの始まりの所で、ボランチ同士のなんでもないパス交換のミスが出てボールを失い、そこからCKを与えての失点。高さに分がある名古屋にみすみすチャンスを献上した格好だ。

さらに、一度追いついた後の2失点目もまた石﨑監督の表情を曇らせたことだろう。ハーフタイムに「後半の立ち上がりを十分意識しよう」と指示して送り出したにもかかわらず、49分に勝ち越しを許す。キーパーからのロングボールをノヴァコヴィッチが落とし、川又堅碁、永井謙佑とつないで矢田旭がフィニッシュ。川又や永井への寄せのタイミングがワンテンポずつ遅れ、寄せたDFの裏を矢田に使われてしまった。

2度のビハインドを救ったのはDF當間建文のヘディングだ。1点目は石川竜也の右CKから。「ダニルソンのマークが外せるなというのはスカウティングでも話していた」(當間)というコメントを聞いてからビデオを見直すと、なるほど小気味好いほどに當間がダニルソンを振り切ってフリーで走り込んでいる。コーチ陣を含めての、「してやったり」のゴールは、當間にとってJ1での初ゴールとなった。

そして2点目は宮阪政樹のアシスト。ペナルティエリアの左、深い位置からのFKだ。「ハーフタイムにロッカールームで宮阪と、あそこに蹴るという話をしていた」という當間は、キックの直前までファーでマークのダニルソンと駆け引きしていたが、スルスルとニアに走り込み、ピンポイントで合わせてゴールに叩き込んだ。

しかし、追いつくものの逆点に持ち込めないモンテディオは63分に3度目の失点。本多勇喜のクロスをノヴァコヴィッチに頭で押し込まれてしまう。すると石﨑監督は71分に日髙慶太→ロメロ フランク、74分に伊東俊→萬代宏樹、76分に高木純平→キム ボムヨンと、立て続けに交代カードを切った。負けて終わるつもりはない、という意思が伝わって来た。

その交代選手が期待に応えたのは追加タイム。高木利弥からのパスを受けたキム ボムヨンがクロスを入れると、ニアで萬代が大きく頭を振る。ボールはファーポストに当たり、ゴールの内側に転がった。

試合終了間際の同点劇でもぎとった勝点1。それでも、冒頭に記したように、試合後の監督・選手コメントからはむしろ危機感の方が強く伝わってきた。攻撃面では3つの得点シーン以外にも良い形が作れていたこともあり、もったいない失点でゲームを落としてしまったという印象が残る。

もちろん、収穫はあった。リーグ戦ではリザーブに回っている選手たちが、いつでも主力に取って代わろうと準備を整えていることが、ファン・サポーターにも十分に伝わったはずだ。新加入の高木純平もその一人。モンテディオ流のハードワークには「練習からついて行けていない」と苦笑しつつ、この日のプレーは今後に期待を抱かせるものだった。當間の1点目を生んだCKは、當間のロングフィードを中島裕希がワンタッチヒールで落とした所へ走り込んだ高木純のシュートをGKが弾いて得たもの。後半にも高木利のクロスにダイレクトでシュートを放つなど、ゴールへの意識の高さを見せた。高木純への評価を聞かれた指揮官は、チャンスメイクや決定力に不満を呈するコメントを残したが、それも期待の裏返しだろう。

次の試合はすぐにやってくる。試合の入り方、失点の仕方。少しずつでも修正・改善のステップを昇って行くことでしか、J1残留という目標にたどり着くことはできない。

(文=頼野 亜唯子)

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