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【練習レポート】中断された紅白戦と“石﨑マジック”(1301文字)

居残りでシュート練習をする松岡亮輔。ナビスコ杯・神戸戦でのゴールも練習の賜物だ

居残りでシュート練習をする松岡亮輔。ナビスコ杯・神戸戦でのゴールも練習の賜物だ

【15.4.10. Fri. 第3運動広場1 くもり】
9時30分からのミーティングが終了し、クラブハウスから真っ先に練習場にやってきたのは、いつもどおりの山岸範宏。今日もいつもどおりに練習が始まると思われたが、ちょっとした異変は、練習場到着の2番手がディエゴ、アルセウのブラジルコンビだったこと。毎日練習場に通っているサポーターも気づいて、「珍しいね」と話していた。

この日一度だけ見られた摂津颯登の貴重なヘディングシーン。山形のGK陣が常々ヘディングの練習をしているというわけではない

この日一度だけ見られた摂津颯登の貴重なヘディングシーン。山形のGK陣が常々ヘディングの練習をしているというわけではない

10時を2分ほど過ぎ、グラウンド内でのトレーニングが始まった。
明日は鳥栖遠征の日だが、出発便の時間が早く、練習開始も8時45分からに繰り上げられている。メニュー的にも多くを盛り込めないため、今日のうちに紅白戦、さらにセットプレーの攻撃と守備両方が盛り込まれた、たっぷりめの内容だ。

昨年からセットプレーの攻撃と守備は日を分けて行われることが多かったが、以前、石﨑信弘監督にその理由を聞いてみたところ、「集中がもたないんだよね。特にサブの守備(つまり、主力組の攻撃時)のほうが」と話していた。ただ、そうと決めたらテコでも動かないというわけではなく、状況に応じてメニューの組み替えはその都度行われている。

紅白戦開始から4分、いったんプレーが止められ、給水となった。短時間で紅白戦が中断されるケースは、主力組の出来が悪いときと相場が決まっている。水を入れたあと、紅白戦の開始前と同じように、主力組だけの小さな輪ができる。そこで石﨑監督は、プレーするうえで大事なポイントを伝える。

紅白戦の最中は主力組の陣地に入ってフィールドプレーヤーの背中を見ながら動きをチェック。気づいたことがあっても、声をかけることは最小限。何か気づくたびにプレーを逐一止めることもない。ただ、このままではよくないと見ればプレーを切り、水を入れさせ、再びできた輪の中では石﨑監督が、激昂したり感情的になったりする様子もなく、2分ほど、ただ淡々と要点を伝える。

中断から4分後、プレーが再開されたピッチ上でまず目に飛び込んできたのは、主力組の前線の選手がサブ組のバックラインにスプリントでプレッシャーをかける姿。この選手だけでなく、主力組全体が中断前よりも球際の厳しさを増し、試合の質は間違いなく上がった。15分×2本のケースが多い紅白戦、この日は正味20分×1本だった。
もちろん、言われなくても修正できるのがベストだが、こうした中断を経たあとは内容がはっきり改善されることが多い。これはひとつの“石﨑マジック”と言えるかもしれない。

続くセットプレー練習を終え、石﨑監督の「ピッピピ、ピッピ」の笛に続いて全員が「パンパン」と手締めをしたのが11時36分。その後はそれぞれが居残りで課題の練習に取り組んだ。この居残りのシュート練習で好調だった様子を石﨑監督がチェックしていたことで、萬代宏樹は名古屋戦のビハインドの状況で投入され、土壇場で同点ゴールを決めている。

連戦の最中でも、ここまでフル出場の山岸は居残りでさまざまな種類のトレーニングを精力的に消化していた。ゴールマウスがピッチ外へ片付けられたのが12時27分。同じ頃、サブメンバーを中心に行われていた高橋健二コーチによる「健二塾」も終了した。

(文=佐藤 円 写真=嶋守生)

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