Dio-maga(ディオマガ)

〈Dio-maga〉インタビュー:日髙慶太 パスの職人、縦へのこだわり《前編》(1)


モンテディオに関わるさまざまな人に世界観をお聞きする〈Dio-maga〉インタビュー。第1回は、モンテディオ加入4年目、日髙慶太選手のインタビュー《前編》をお届けする。非凡なパスセンスを持ちながら、3年目の昨シーズンにようやく公式戦に絡み始めたところだ。
今回の《前編》では、今シーズン出場したヤマザキナビスコカップの振り返り、さらに契約満了から再契約までの経緯と心境が明かされる。
チームが目指す「J1残留」には、彼のようにこれまで控えに甘んじてきた選手たちの逆襲は必要不可欠な要素だ。
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■「またそこに逆戻りするという危機感は人一倍持っていると思う」

Q:今シーズンはナビスコカップ2試合(清水戦、名古屋戦)に出場していますが、感じた手ごたえは?
「もちろん、やれた部分、やれなかった部分というのは冷静に振り返ったらあります。でもその前に、リーグ戦に自分が絡めていないなかでのナビスコカップで監督がチャンスをくれているわけで、そのなかで自分は結果を出し続けないとまた新しいチャンスが来ないという意識です。チームの結果はまず第一だし、個人的にも自分が納得のいくプレーをして、監督の信頼を少しでも積み上げてまた次のチャンスをもらえるようにというところを考えると、まだまだ足りないと思います。自分は試合に出れなかった期間が長い分、そういうチャンスをもらったときにできなかったら、またそこに逆戻りするという危機感は人一倍持っているので、そういう意味でのアピールというのはまだ足りないと思います。自分が出た試合はまだ負けていない、1勝1分けというのはいい部分かもしれないけど、まだまだ全然です」

Q:清水戦の試合後にミックスゾーンで話をうかがったときに、林陵平選手に出したパス(67分のプレー)の話が印象的でした。「あれは自分の強みだ」と。そこはプレーヤーとしてのこだわりですか?
「効果的なパスというか、相手が意表を突かれるようなボールというのは、点を取るうえでは結構大事な部分だと思っているし、チームのいまの試合を見ていると、ワイドやシャドーが起点になることが多いと思っていて、ボランチからの攻撃のスイッチというのは、自分がチームに見せられる新しいポイントだと思っています。そこは継続してやっていきたいと思います」

Q:あのシーンは、流れていった中島裕希選手の奥にいる林選手をダイレクトパスで狙ったものでした。
「俊君(伊東)から落としてもらって、インサイドで」

Q:パスを出した瞬間だけ見ると相手選手に向けて出しているようですが、相手選手は中島選手に付いていくので、そこにコースが空くと見越してのパスでした。
「そこで裕希さんに出すのは誰でもできるプレーだと思うので、1個先まで見えていたという意味で、そういうシーンをどんどん増やしたいと思っています。タイミングもそうだし、ボールの質もそうだし、こだわったらキリがないと思うので、そういうのは意識してます」

■「ピッチ上で出たものが自分の実力だと思っています」
日高02
Q:名古屋戦もダイレクトで縦を狙ったパスは多かったように思います。
「タイミングが合わなくて通らなかったシーンもあるし、全然慌てないで自分が普通に前にボールを運べばいいシーンもあったし、名古屋戦はそこの判断がよくなかったです。相手がどう出てくるかで自分のプレーの選択肢をもう少し考えなくちゃいけない部分はあるなかで、名古屋はプレッシャーが前からあまり来なくて、ボランチのところではある程度好きにやらせてくれるというか、最後来たところで止めればいいというような守備の仕方だったので、もっと自分のところでボールを持てばよかったと思うんですけど、そこで自分の経験のなさ、判断を誤るシーンが多過ぎたかなと思います」

Q:相手のレベルが上がったというよりは、自分の中の問題ということですか?
「相手のレベルじゃなくて、自分です。だからそういうのも含めて、あの試合は自分の技術とか体力をすべてピッチ上で表現できたかって言ったらそうじゃないけど、でもそこで出たものが自分の実力だと思っています。前半に一つミスをしたときにそういうのを引きずったりとか、メンタルの部分も全部含めて、自分の持っているものを表現できないっていう意味で、実力不足だなと思いました」

Q:そういう試合のあとは…。
「相当ヘコみました」

Q:本当はもっとできるのに、と?
「いや、そういうふうに思っちゃダメだというか、結局できなかったわけだから、自分の実力がなかったわけだし。もっとできるという自信はあるけど、ピッチで出たもので評価されるのが当たり前だし、試合経験も他の選手と比べたら少ないなかで、ああいう試合で自分のよさを前面にアピールするという姿勢を見せないといけないと思いました。だから、とにかくあの試合のあとは…。でも、評価としては、自分が納得するプレーをできなかったからマイナスかもしれないけど、あの試合も自分にとってプラスの経験にしないともったいないと思うので、それを日々の練習で表現していって、またチャンスをもらえるように頑張るだけだなと思います」

Q:ちなみに、相手はJ1のチームでしたが、J1とJ2の差のようなものは実感しましたか?
「最後のところの質は感じました。この間の鳥栖戦もそうだけど、ワンチャンスじゃないけど、ああいう決めなきゃいけないところで決める。吉田豊選手のクロスもそうだし、豊田選手のヘディングもそうだけど、ああいうところでちゃんと仕事してくるというところではJ1とJ2の差はあると思うし、逆に言えば、守備のところでも最後やらせない。そういう最後のところの厳しさでは違いがあるかなと思います」

Q:実際に対峙してみても違いは感じましたか?
「自分のプレーが不甲斐なかった人が言うセリフじゃないかもしれないけど(笑)、そんなには…。プレッシャーとかで言えばJ2のほうがガツガツ来るイメージもあるし、シンプルなフィジカルの強さとかスピードの速さとかは確かにあるのかなという気がしますけど、プレスとか守備の厳しさはそんなに差はあるかなと。まだリーグ戦に出てないのでなんとも言えないですけど、そこまで差があるようには思わないです」

Q:それほど遠いレベルではないぞと。
「それは言う分には簡単です(笑)。でも、やる自信は常に持ってないといけないと思うし、出て自分のよさを出せれば通用する相手だと思っているけど、現状としてリーグ戦は出てないわけだし、力がないから出てないわけで、そこは謙虚に受け止めて、『リーグ戦で使ってもこいつはやってくれる』と監督に思ってもらえるような努力をしていきたいなと思います」

《前編》(2)へ続く

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