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【円コラム】手術のおはなし(1097文字)

人生でこれまで、外科手術というものを3回受けたことがある。

一度目は中学校入学後1週間というタイミングで盲腸になった。朝起きて腹痛がするので地元の医院に行くと盲腸ではないかと言われ、即病院に紹介状を書いてもらい、その日のうちに手術台に乗った。出術前に打つ筋肉注射の痛みと、術後に麻酔が切れたときの痛みはよく憶えている。そこで1週間ほど入院した。現在は最小限の傷で済むようだが、当時は10センチ近くメスを入れた。抜糸の経験も初めてだった。

2度目は大学1年の春休み。交通誘導員のバイト中に車にはねられ、左膝の内側側副靱帯断裂および前十字靱帯損傷。受傷から手術まで10日間ほどかかったと記憶しているが、その間、ギプスで左足をぎっちり固定していたため、手術当日にはすっかり足が細くなっていた。術後も靱帯がくっつくまで固定が必要で、その固定する期間が長ければ長いほど、膝の関節は固まり、のちのリハビリがより大変になることも知った。

正座ができるようになったり、足を引きずらずに歩けるようになるなど日常生活を不自由なく遅れるようになるまで、このときは1年以上かかった。また、神経が通っている皮膚にメスを入れるため、術後に膝のあたりを触ってもしばらく感覚がなかったり、膝を曲げ伸ばししようとしてもどこにどう力を入れればいいのかわからない状態も経験した。

3度目は2013年のキャンプ取材中。飛んできたサッカーボールを頭上でキャッチしようとして指先を巻き込まれ、念のため見てもらった地元の整形外科でレントゲンを撮った結果、左手人差し指の第一関節を支える骨が折れていることが判明した。山形に戻って手術し、ここでも術後のリハビリを覚悟したが、固定している期間中に傷口からばい菌が入り、関節の軟骨が減ったことで途中でリハビリは困難と告げられた。現在も、骨は付いたが第一関節が曲げられない。

そこまで無茶をしたわけでもアグレッシブに生きてきたわけもはないが、それでも3度も手術を経験した。自分が体験している分、その辛さや原状回復までの道のりの一端を自分なりにつかんでいる部分はある。怪我はなるべくしたくないが、怪我と付き合いながら生きる人たちを取材するいまの仕事には、いくらか役に立っているようには思う(盲腸が役に立つ日が来るとは思わなかったが)。

日常生活に戻ることだけでも心が折れそうになるのに、トップレベルのアスリートが怪我以前のプレーを取り戻すことがどれほど大変なことか。その苦しみに寄り添えるなら、無駄な体験ではなかったと断言できる。そう言えば、まだ筋肉系の怪我をやったことはないなあ……いや、無理無理!

(文:佐藤円)

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