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【トピックス】ゲストティーチャーは2人の『ちゃみ』? 〜「夢クラス」@南陽市立沖郷小学校

「モンテディオ山形、背番号4番、宇佐美宏和です。あだ名は『ちゃみ』と言います。『ちゃみ』と呼んでください」

そう自己紹介した宇佐美選手のあとで、もう一人のゲストティーチャーも自己紹介をした。
「松岡亮輔です。ニックネームは『ちゃみ』と呼んでください!」

さっきの宇佐美選手と同じニックネームだと気づいた子どもたちはアハハと笑ったが、その後、松岡選手は「本当はまっちゃんと呼んでください」などと訂正することなく、最後まで『ちゃみ』で通した。かくして、2人の『ちゃみ』が存在することになった。

自己紹介。松岡によって宇佐美のニックネームが「ちゃみ1号」、松岡のニックネームが「ちゃみ2号」となった。

自己紹介。松岡によって宇佐美のニックネームが「ちゃみ1号」、松岡のニックネームが「ちゃみ2号」となった。

5月19日に始まった毎年恒例の「夢クラス」。この日は県内3校で行われたが、南陽市立沖郷小学校6年生69人のもとを訪れたのは2人の『ちゃみ』。入場の際、会場の体育館が拍手で包まれる中、入り口手前で2度Uターンしてつかみはオッケー。歌の歓迎を受け、質問コーナーに答え、しっぽ取りゲームで汗を流した。しっぽ取りゲームでは、沖郷小学校の子どもたちが1週間強化練習を重ねてきた中での3分×2セット。同じ時間に行われている指名練習並みのハードさだ。

男女に分かれてしっぽ取りゲーム。積極的に絡んで走り回る1号と、会話したり奇行に走る2号が対照的。

男女に分かれてしっぽ取りゲーム。積極的に絡んで走り回る1号と、会話したり奇行に走る2号が対照的。

「カエル大好きー!」など謎の合い言葉で集合写真を撮影したあと、再びもとのとおりに整列し、3クラスから2人ずつ代表が前へ出て夢の発表を行った。それをじっくりと聞いたあと、2人の『ちゃみ』はリフティングを披露。さらに子どもたちとリフティングや、宇佐美選手が守備をする1対1のドリブル対決も行った。「サッカー選手になりたい」「なでしこJAPANに入りたい」との夢を表明した子どもたちは何人かいたが、2人の『ちゃみ』が参加者を募ったときは照れくささからか、自分から進んで前に出てくる子は少なく、周りの友達に背中を押されてようやく出てくる子が多かった。松岡選手が「ここは出てくるべきやと思うよ。こんなチャンス絶対ないから」と促す場面もあった。

『ちゃみ』1号2号がリフティングでプロの技を披露したあと、「夢はプロサッカー選手」と語った小学生と一緒にリフティング。

『ちゃみ』1号2号がリフティングでプロの技を披露したあと、「夢はプロサッカー選手」と語った小学生と一緒にリフティング。

その後、希望した子どもたちと『ちゃみ』1号が1対1のドリブル勝負。1号はプロの実力を見せつけた。

その後、希望した子どもたちと『ちゃみ』1号が1対1のドリブル勝負。1号はプロの実力を見せつけた。

ドリブル対決を終えたあと、いよいよ、本題である夢の大切さについて語り始めたのは『ちゃみ』2号・松岡選手。
「フォワードの人やったらドリブルで抜くのが得意。いまの宇佐美選手やったら、相手がドリブルしてきたのを止めるのが得意。いろんなタイプの選手がプロにはいる。この中にもいろいろ夢を持っている人がいると思うけど、自分が夢を叶えたいと思ったら、それぞれのいい部分、人に誇れる部分をどんどん伸ばしていったほうが夢は叶いやすいのかなと思います」

『ちゃみ』1号、宇佐美選手も別の角度から夢を叶える際の大切さを説いた。
「何にしてもそうやけど、夢に向かってチャレンジすることが大事だと思う。いまの(ドリブル対決)もそうやけど、チャレンジしないとプロのどんなところがすごいのかもわからへん。それをまず1回やってみる。人間って絶対失敗するから。ここにいる僕たちだってずっと失敗し続けて、いまでも失敗してる。監督に怒られるし、チームメートから怒られるし、いまでも挫折してる人だっておるし。それでも、あきらめちゃうと、自分の限界がそこになってしまうから。もう一歩壁を越えるのやったら、『これできる』ってことをどんどんチャレンジして。一つ一つ小さなことから、何でもいいです。挑戦してください、何事にも」

「一言いいですか?」と再びマイクを握った『ちゃみ』2号・松岡選手は、見過ごされがちな指摘をする。
「この中には、夢を持ってない子もいると思う。全然それでよくて、大人は『夢を持て』と言う。でも自分が将来やりたいことをまず見つける作業を始めるだけでいいし、必ずしもいまの時期に無理矢理夢を持つ必要はないと思う。夢を持つ前の段階で一つ言えることは、絶対それは好きなことだから。まず好きなことは何かなと考えて、その延長線上に夢があると思ってるから」

最後はハイタッチでお別れ。 1時間強の濃密な時間はあっという間に過ぎた。

最後はハイタッチでお別れ。
1時間強の濃密な時間はあっという間に過ぎた。

「夢クラス」はその性質上、これから夢を叶えようとしている子どもたちに、すでに夢を叶えたプロのJリーガーが成功体験を語る場になりやすい。それはそれで必要なことだが、2人の『ちゃみ』は今回、失敗することの大切さを伝え、夢を持てないことも含めて悩む過程を認めている。その率直な言葉はより深く子どもたちの心に響いたのではないか。それはこの先、子どもたちが悩んだり壁に当たったときに、一歩踏み出すための支えになる。

(文=佐藤 円、写真=嶋守生)

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