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【頼コラム】語り残した「鈴木雄斗の情熱」

鈴木雄斗選手が川崎フロンターレに移籍する。たった2年ではあったけれど、いろいろな話をしてもらったなという印象が残るのは、こちらの質問の意図を汲み取るのがうまく、抽象的なことも言語化する手間を厭わない鈴木選手のおかげだったと思う。

彼の新たなチャレンジへの決意を知り、真っ先に思い出した試合がある。昨年7月に行われた天皇杯3回戦、ホームに鹿島を迎えたゲームだ。5−0で完敗したあの試合の鈴木選手の姿は、他のどの試合よりも深く記憶に刻まれている。怪我人が続いていた時期の、リーグ戦の合間の水曜日。疲労や故障のある選手を休ませつつの戦力は、ベストとはいえないメンバーだった。相手は鹿島。だからといって最初から諦めていたはずはないが、後半早い時間に淡白な守備を突かれて2点目、3点目と立て続けに失うと、チームはどこかおとなしくなってしまった。頑張ってはいる。でも、熱量が足りていない。そんな中で、最後まで相手に食らいついて行っていたのが鈴木選手だった。惜しいシュートもあった。4失点目は自らの守備を高卒ルーキーに外されクロスを入れられてオウンゴールにつながった。それでも、なんとか一矢報いようとゴール前をうかがい、ボールが相手に渡れば最終ラインまでケアに戻った。その10番の背中から、「ちくしょう、ちくしょう」と心の声が立ち昇ってくるのではないかと思うほど、痛切な悔しさが伝わって来て、目を離すことができなかった。

その胸の内を聞きたくて、けれどすぐには聞けなくて、2週間ほど経ってから、そろそろよかろうと練習後の彼をつかまえた。
——天皇杯鹿島戦は、雄斗選手の「意地を見せたい」という気持ちを感じました。でも、なかなかうまくいきませんでしたか。
すると彼は、ふさがり切らない傷に触れられたかのように苦い顔になって、こう言った。

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