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【ランダムフォーカス】5年越しのヒーロー〜山田拓巳選手

6/6(水)に行われた天皇杯岐阜戦は、熱戦の末、PK戦を制して3回戦進出を決めました。PK戦のヒーローと言えば、やはり岐阜の2本のキックをセーブした児玉剛選手ですが、もう一人のヒーローは、勝負を決める最後のキッカーとなった山田拓巳選手でしょう。両チーム4人ずつが蹴り終えた時点で3−2とリード。「次に山形が決めれば勝ち」というプレッシャーのかかる状態で、5番目のキッカーとして監督から使命されていた山田選手に順番が回って来ました。山田選手は試合後、この時に脳裏をよぎったシーンがあったとコメントしています。

「何年か前の天皇杯の富山戦で、俺が決めていれば勝ちの時に外したんですよ」

覚えている方も多いかもしれませんが、これは2013年の天皇杯2回戦のこと。ホームで行われたカターレ富山(当時J2)との試合は延長戦を終えて2−2、PK戦に持ち込まれました。5人ずつでは決着がつかずサドンデスとなり、9人目まで終えた時点で7−7。そして富山10人目のキックをGK常澤聡選手(現・群馬)が止めたのです。当然スタジアムは大いに湧き、次に山形が決めれば勝ちという場面でペナルティスポットに立ったのが山田選手でした。ところが、山田選手のキックは枠を外れ、PK戦は継続。一瞬微妙な空気が流れましたが、最終的には12人目の富山のキックを常澤選手がセーブし、ふた回り目の林陵平選手(現・東京V)が決めて決着しました。

この富山戦の後、山田選手は次のようなコメントを残しています。
「勝ったから笑えていますけど、負けていたら立ち直れないくらいのショックですよ。(PKを蹴る順番は)自分で『10番目』と言いました。もうその時点でダメですね。そのメンタルがダメ。珍しくおいしいところが来たのに、ヒーローになれない……。練習します!」

あれから5年。再び巡って来た“決めれば勝ち”のチャンス。「マジか、本当に俺に回ってくるんだ」という緊張感の中でも、「こういうのを決めて自分も成長しよう、一皮剥けたい」と強い気持ちでボールを置き、今回は見事に決めて歓喜の輪の中心になりました。

そして実はもう一つ、キャプテン・山田選手はこのPK戦に重要な貢献をしています。それは、PK戦をどちらのゴールに向かって行うかを決めるコイントスに勝ったこと。これにより山形サポーターの目の前でPK戦を戦えたことは、山田選手自身も「本当に大きかった」と言います。5年の時を経て運の強さとメンタルの成長を見せてくれた山田選手は、やはりモンテのヒーローです。

文・写真:頼野亜唯子

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