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【ランダムフォーカス】俺よ、俺!〜松岡亮輔選手


少し日が経ってしまいましたが、天皇杯2回戦・FC岐阜戦でのこと。前半36分の先制点は、フェリペ選手の右クロスを汰木選手がヘディングで決めたものでした。あの場面、中盤からポンポンとパスがつながり、きれいなスルーパスがフェリペ選手に通ったところで一気にゴールの可能性が高まったと思います。

でも実は、スタジアムが汰木選手のゴールに湧く中、記者席では「今のスルーパス、誰?」と尋ね合う記者たちが首をかしげていました。普段は誰かしら自信を持って答える人がいるものなのですが、この時は「茂木がアルヴァロに当てて、落としを……誰が出した?」「たぶん……茂木?」と心もとない声が聞かれるばかり。リーグ戦ならここでDAZNの映像を確認できるのですが、試合中継のなかったこの試合ではそれもかなわず、モヤモヤしたまま試合を終えました。

ところが試合後に出た公式記録を見ると、8→7→9↑25HSの表記が(→:ゴロパス ↑:浮き玉パス HS:ヘディンシュート)。あの素晴らしいスルーパスの出し手は、松岡亮輔選手だったのです。試合後のミックスゾーンで捕まえ損ねたため、数日後、松岡選手にこの場面について聞くと「誰から出たかわかっていなかった? あのアウトのパスは俺よ、俺!」と笑ったあと、こんな話をしてくれました。

「まぐれです(笑)。でも、よくあんなプレーが出たなという感じ。あそこで落ち着けるというのは、練習の成果というか意識というか。木山さんにはそういうところの質も練習から求められるので」

この試合は3月31日の山口戦以来の出場でしたが、ブランクを感じさせないプレーを見せてくれた松岡選手。それも、日々のトレーニングに「本当に前向きに取り組めているから」だと言います。

「楽しくやりました。公式戦の緊張感はプロの世界でしか味わえないものだから、ちょっと出るたびに、やめたくないなあ、と思います。また練習を続けて、先発で出たいな、と」

試合を通してのパフォーマンスについては「良いところと悪いところと、五分五分。点も決められたらよかったのにな」と振り返りましたが、平日のナイトゲームに駆けつけたサポーターの皆さんは、79分間の松岡選手のプレーを堪能したのではないでしょうか。久しぶりにNDスタを包んだ松岡選手のチャントの、弾むように楽しげな響きに、皆さんのNo.7への思いが表れているような気がしたのでした。

文・写真=頼野亜唯子

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