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【2021 MOM of the year選考会議/vol.1】あのお騒がせした件についてと、いろいろあった今シーズンをざっくりと振り返り

救世主現る!佐藤尽監督、そしてクラモフスキー監督

嶋 尽さん(佐藤、コーチ)の話もしなきゃいけないですよね。

円 よかった。かっこよかった。

嶋 立て直したからねえ。尽さんには監督の囲みで話を聞けなかったのが残念すぎた。囲みできなかったですもんね。

円 試合後のZOOM会見でしか聞いてないですね。

嶋 もちろん、石丸監督が解任になって、次の試合に集中したいというのと、それこそ情報を出しちゃダメだというのと、いろいろあったと思うんですけど、なぜそこをいろいろやってくるんだとかをもうちょっと詳しく話してくれたら、すごくよかったなと。

円 石丸監督の解任を受けて、尽さん自身も「動揺した」と言っていて、見ててもわかるくらいの緊張感がありました。その初戦、第10節の磐田戦なんかはチーム全体が異様な雰囲気の中での試合で、あそこで勝てたというのは本当に大きかったですね。

嶋 虎の子の1点を必死に守った感じでしたね。後半、かなりルキアンが外してくれた印象がありました。やられてもおかしくなかったですよね。

円 何点かやられてもおかしくない試合でした。やっぱり試合前に「闘わなくちゃいけない」というところを強調したことで、なんとかしのぎきれたところもあると思います。痺れる試合でした。というのと、「南秀仁ボランチ」もあの試合からで。

嶋 コンバートね。山田康太トップ下。

円 見るからに攻撃が速くなった感じでした。

嶋 尽さんがコメントで言ってたのは、「最終ラインからどうやってトップやトップ下にボールを入れるかというところで、ボランチから引き出して前に入れるところがスムーズにいかないことが多かった。本来受けるはずの南をボランチに(中略)本来トップ下でやっていたものをボランチでやってもらう」という話をしてて、この英断は今シーズンの山形にとってすごく大きかったなという印象もありますよね。

円 コメントを聞いていると、まず秀仁さんのボランチ、引き出すところありきだった。

嶋 去年は駿さん(中村、現福岡)がいたじゃないですか。駿さん、(岡﨑)建哉さんで縦パスポンポン入れられたから問題なかったけど、今年は誰がやったかというと、最初は國分伸太郎、藤田息吹、あと康太か。そこをローテーションしながら使ってたんじゃないですか? 建哉さんは怪我でいなくて、開幕の町田戦は藤田、山田康太でしょ。息吹さんが2節から抜けたんだよ。で、國分が入って。

円 イブさんは開幕戦の出来が良くなかったですからね。

嶋 どこか痛めたんじゃなかったっけ? 開幕戦はガチガチでしたからね、単純に。そんなこともあって、ボランチのこの3人で縦パスが入る選手がいなかったので南さんを入れたんだと思います。

円 縦パスもそうだけど、後ろから引き出すところですよね。

嶋 引き出すところと前に付けるところ、中継役ですね。それがいなかった。確かに中継役がいなければ、それはプレス浴びますね。

円 でも昨シーズンはずっとそれで戦ってきたわけなので、ターニングポイント的にはこのコンバートは大転換でした。

嶋 石丸さんは考えてなかったのかな、それ。

円 それは考えてはいたと思うんですよね。あらゆる組み合わせは頭の中にあったと思います。もしかして監督を続けていたら、そのうちそういう変更があったのかもしれないし。

嶋 解任になってなければ。

円 解任される前の段階で、いろんなシミュレーションはしてたと思います。

嶋 キャンプでは南さんボランチはやってないよなあ。

円 そもそもボランチ候補がたくさんいたし、秀仁さんのポジションは昨シーズンの後半で確立されていたところもあったので、プレシーズンではやってないでしょうね。

嶋 でも、南さんボランチやったことはありましたからね。

円 ボールを動かすところは高いレベルでできるのはわかっていたことですからね。

嶋 尽さんの功績はすごく大きかった。あと、闘う気持ちをすごく入れてくれた、引き締めてくれたなと。監督が解任されたことの引き締めもあるだろうけど。

円 連戦でしたからね。中3日しかない中で任されて、しかも自分が指揮をずっととっていくのではなくて、次の監督を探しているというのをわかった中で暫定的にというのは、すごく難しいんじゃないかと思います。

嶋 そうなんですよね。やり方もそんなに大きく変えることもなく、スムーズに引き継がせたというところを見ると、忠実にやってくれる監督も素晴らしいなという。柔軟だなあ。

円 残すところと変えるところを間違えると、そうはならないと思うので。

嶋 クラモフスキー監督が「ベースが残っていてやりやすかった」という言い方をしていましたけど、それができたのは石丸監督だけじゃなく、本当に尽さんの功績がすごく大きかったなという感じですか?

円 だいたいは石丸監督が作ったものという基盤だと思いますけど、それを発展的につないだ。

嶋 いまあるもので料理をして、おいしいものを作ってくれたのが非常に素晴らしい。尽さんのときは2勝1分1敗か。最後、京都にやられたけど、2勝できたし、素晴らしかったと思います。で、クラモフスキー監督。

円 見ての通りですよね。

嶋 課題とか「これ大丈夫なの?」と思うサポーターはいっぱいいつつも、ボールが動いて点が取れるのであれば楽しいよねという印象はある。楽しいところと、不安な要素もありつつみたいなサッカーになりました。

円 就任直後からのイケイケドンドンな感じは楽しかったですけどね。そして終盤にへばるところまでがセットで。「追いつかれるかどうか」でハラハラして見るのもセットで、あのサッカーはおもしろかったですね。

嶋 でもあれで2点しか取れないから1点差になってバタバタするわけで、3点取ってたら絶対戦い方は違ってましたよ。3点取れるぐらいのチャンスってめちゃくちゃあるんですよね。だから、そのチャンスを決めるか決めないかというところがものすごく大きくて、それができると、もうちょっとペースダウンしても余裕のある戦い方ができましたよと。今年は決めないのが悪いに尽きるんですよね。あれだけ攻撃的にやっていて、60点しか取れないんだもん。

円 石﨑信弘監督の時代を思い出しました。最初15分はフルパワーでガンガン行くんですけど、点は入らない。逆にそこから流れが変わってやられる、みたいなパターンが多かった。

嶋 僕が相手チームの監督だったら、間違いなく「最初の15分は耐えろ」と言いますもん。

円 金沢の柳下正明監督はまさにそれでした。「前後半の25分は耐えろ」と。先制点を取ったときと取れなかったときで、これだけ結果に差が出るチームも珍しいかもしれないですね。

嶋 逆転されたのは1回あります。41節の町田戦は2-0から5失点して大逆転負けを喫したのがまさに。

円 先制点取れないとほぼほぼ勝ててないですね。そういうわかりやすさがあります。

嶋 でも、だいたいの試合で最初にチャンスは作ってますよ。

円 課題としては、そこで決めきるのと、決めきれなかったときでもなんとか修正して点を取るとか逆転するとか、そういうことができるところまでいかないとなかなか昇格は難しいかなあと思いました。

嶋 クラモフスキー体制で先制した場合は15勝1分1敗ですね。

円 すごい、圧倒的。

嶋 逆に先制されると2勝3分8敗。逆転したのは2試合か。第29節・新潟戦(◯2-1)と、第21節の大宮戦(◯3-1)。なので、先制されるとほとんど負けるか引き分けるか。先制されると点が取れないというのも原因を考えないといけないですけど、どうですか?

円 クラモフスキー監督がもし勝ち負けだけにこだわれば、もう少し采配的に打つ手を出せる監督なのかどうなのか。先日、高山明泰強化部長に話を聞いたときに、「今年はチームのスタイルを作る年だ」ということで、まずはスタイルを構築するという選択をしたと思うので。

嶋 あえてしなかった。

円 いろいろやり過ぎることによって軸がブレる可能性もあると思うので、あれもこれもと欲張らずに、幹の部分だけ今年はやりました、ということだと思いました。

嶋 そう考えると、あえてやってたなら、ちょっと頑固に見えるところ、執着しているところも頷けるけど、じゃあ来年変わるか。そこも楽しみなところですね。

円 シーズン終盤に本当に昇格争いをしていたら、もしかして勝つためにいままでやってきたスタイルを捨てることもあるかもしれないですけど。

嶋 今シーズンの決定打になってしまったのが、9月の上位3連戦ぐらいで離されてきつくなったじゃないですか。そこらへんが分岐点で、そこでもし一気に勝点を詰めることができていれば、もしかしたら変化があったかもしれない。

円 あと1試合、2試合勝てば昇格という状況だったら、もしかしたらスタイルにこだわらない采配もあるかと思いますけど、あれは何戦でしたっけ? パワープレーに移行したけどうまくいかなかったやつ。

嶋 ヴェルディ戦(第37節、●1-2)。國分が「ピーター的にもパワープレーはあまり好んでいない。アディショナルタイム5分の中でパワープレーにかかるのがちょっと早かった」「パワープレーの前にビッグチャンスを何回か作れてますし」というコメントでした。

円 あの采配がどうなのかですよね。いままでやってなかったことをやろうとしたパターンだったと思いますけど、結果的にはもう少し自分たちのスタイルでできたところがあったんじゃないか、という反省もあったと思います。そういう状況の采配としてはどうなのかなという試合もあったので。

嶋 逆に選手もびっくりしちゃったのかもしれないね。急にパワープレーするって言い出しちゃったから。

円 パワープレーの可能性はないこともないんでしょうけど。

嶋 今年のクラモフスキー監督は、勝負師という印象ではなかったじゃないですか。

円 勝負師というよりもスタイル構築を優先させたイメージですね。

嶋 そういう監督が来年どうなるかということですよね。同じことをやってたら、さすがにきついと思いますよ。

円 どう進化していくかですよね、ここから。メンバーがどうなるかによっても違ってくるので、あまりここで詳しく予想しても無駄になる可能性が高いですけど。

嶋 シーズン後半の中で、相手にやり方も知られていたじゃないですか。ボールのつなぎ方もそうだし、攻め方もそうだし。来年もそのデータ自体は、選手が変わっても相手チームにあるわけじゃないですか。早い段階でその対策をやられちゃうと、また来年、頭からつまずくリスクはあるかなと思います。似たようなイメージのサッカーばっかりやっていると、イケイケドンドンだけでは厳しいかなという印象はありますね。

円 ボールを支配できている試合も多かったし、あとはセットプレーでもう少し点が取れるとラクだったり、勝てた試合も増やせたかなと思いますね。

嶋 でもデータを見ると、意外と取れてるんですよ。取れてなかったですか?

円 だいたいシーズン前半ですよね。中断明けはほとんど取れなかった。逆にセットプレーで取れてたからこそ、勝ててた時期は勝ててたという見方もできると思います。

嶋 藤田息吹さんはセットプレーから3点取ってますからね。

円 背中引っ張られながらヘディングできるんですね。どこで練習したのか。

嶋 そういうところも取れればねというところはありましたね。

円 来シーズンの課題になりますね。

(vol.2につづく)

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