吉田達磨監督の次への思いと選手の自覚が一致する、満足無しという価値ある引き分け【2017明治安田生命J1第17節 甲府vs鳥栖 レビュー】
2017明治安田生命J1第17節 甲府vs鳥栖 レビュー
得点者:なし
満足の引き分けではないけれど、吉田達磨監督の日々の言葉が強がりや逃げではないことをはっきりと示し、理解できる試合内容だった。まだ上手くはないけれど、これが達磨ヴァンフォーレの戦う姿勢。矜持は100%見せた。試合後、引き上げてきたときの新井涼平の顔を見たフロントスタッフは、「顔が歪んで首が斜めに曲がったままだった」と表現した。それだけ激しく戦い、試合終了の笛で一気にテンションがゼロになって激闘の軋みが身体の悲鳴として一気に表れたのかもしれない。しばらくロッカールームで横になっていたそうで、バスに乗り込むためにミックスゾーンを通るときは首や顔に異常は感じられなかったけれど、これまでで一番疲れていたように見えた。コメント取材には応じてくれたけれど、できれば早くバスに乗って座りたかったんじゃないかと、今になって思う。
畑尾大翔も同じ。テレビのコメント取材を断らざるを得ないほど疲弊していた。試合後に気持ち悪くなったそうで、勝手な推測だけど強度の高いヘディングを相当回数やったことで脳震盪に近いような衝撃を脳が受けていたのかもしれない。鳥栖のクロスに対して、読んでポジションを取り、ヘディングで弾き返し続けた素晴らしい、頼もしいプレーだった。勝利という結果は得られなかったけれど、11本のシュートを打って、テンションの高い鳥栖と蒸し暑いピッチで渡り合って手にした勝点1は後半戦への希望と勇気。今節でブレイクにならず、それを証明する場・第18節アウエー磐田戦が1週間後(7/8)にあるのは幸運。
気が付いた人も多かったと思うが、試合前からゴール裏のサポーターの声は力がこもっていた。試合中も、息継ぎをするとき以外は張った声で歌い・コールし続けて選手を鼓舞し、背中を押し続けていた。試合後、ゴール裏に挨拶に行った畑尾は深々と頭を下げたが、ほとんどの選手はサポーターが選手同様により高いテンションで一緒に戦ってくれたことを感じて感謝していたはず。ゴールが決まって勝てていれば、完璧な試合だったけれど、希望と勇気が手に入ったことで良しとしてもいいと思う。第12節の広島戦(1-2●)からリーグ戦の結果は●△●△●△と段ボールバッテリーの顔か顔文字みたいな並びだけど、●で1~3歩下がって、△で2~3歩進んで、6試合トータルでは広島戦の頃よりも2~3歩は確実に進歩している。幸運や相手のミスに乗じたイケイケで勝つものいいけれど、「三百六十五歩のマーチ」(歌・水前寺清子)の歌詞みたいで、しっかり積み上がっている感じの方が土台はしっかりするんじゃないかと思える、今。
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