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「イェ~イ」【無料記事 2017明治安田生命J1第20節 甲府vsG大阪 レビュー】

合は、点を取るならドゥドゥかなぁと思っていたけれど、ドゥドゥもウイルソンも思ったほどの質感が出ていなくて、もしかすると厳しいのかもしれないという入りの印象。そして、夏季限定ユニフォームを見慣れていないのでG大阪のファビオが後ろ向きでボールを持った時に、「カウンターのチャンス、ウイルソン行け」って2回くらい錯覚してしまった…。で、段々ユニフォームの色に慣れてくると甲府の守備がいいオーガナイズがされていることにも気が付いた。新井涼平のCB、島川俊郎のアンカー起用はハマっていたから、セカンドボールを拾える確率も高くてイケそうな予感というか希望がムクムク。クロスや裏への走り込みに対する新井の対応は素晴らしく、試合前日の「なんでCBが畑尾大翔や山本英臣じゃないのか…」という疑問も一気に解消。アスリート性が高い選手が少ない甲府において、新井や松橋優のような選手は本当に貴重。

だ、それなりにボールを持つことはできても、G大阪が守備の組織が整っているときは攻撃のアイディアの少なさが気になった。カウンター以外ではイレギュラー的なことが起きないと打開できそうになかった。点を取るのは難しかなぁと思っていたが、ドゥドゥがミスをしてボールを失ったときに、ゴール裏がすぐにドゥドゥのコール。ドゥドゥの顔が下を向きそうなときに背中を押している感じがして「ゴール裏、盛り上げるのが上手いなぁ」と思って前半を終えた。後半の立ち上がりの54分にアデミウソンから長沢駿に通された縦方向のクロスからのヘディングシュートにはヒヤッとしたが、これが最大のピンチでシュートは枠の外。

30度を超える気温の中で行われていたので、後半の早い時間から戦術云々よりも意地と根性の試合になりそうな雰囲気が漂ってきた。58分には松橋が持ち込んで左足で打ったシュートがGK東口順昭のセーブでCKになったが、甲府の選手は思い切りの良さを出せればまだまだ武器は持っている。記者席のすぐ後ろの選手席も、松橋(右利き)の左足のシュートにちょっとザワザワ。そのすぐ後には、エデル・リマが持ち上がろうとしたときに、アデミウソンがマークに付いたが、リマが抜けなかったことにもザワザワ。リマのスルスルと上がっていくオーバーラップをアデミウソンはうまく身体を寄せて防いだが、リマがちゃんと止められたのは初めて見たような気がした。

半の中盤になるとG大阪は倉田秋のカットインが増えるなど、仕留めに来ている感じがプンプン。それでも守備のオーガナイズは崩れていなかったのでセットプレー以外は怖さは小さかったが、問題はコッチがどう点を取るか。3枚目のカードにリーグ戦初出場の曽根田穣を使った甲府は5-3-2から5-4-1にスタートポジションを変えていたが、アイディア不足の感は同じで、誰かが決定的な突破をするかコンビネーションが必要だった。で、出てきたのは意外性のリマ。リマが左サイドで持ち上がり、ウイルソンドゥドゥとのコンビネーションで気がつけばウイルソンがペナルティエリアの中。その前に今野泰幸がリマにアプローチに行く場面があったが、今野にしてはアッサリ引き下がっていて上手く左サイドで連携を作ることができた。ウイルソンには途中出場の米倉恒貴がマークに付いていたし、ゴール前のDFの枚数も足りていたのでそんなにワクワクして見ていたわけではないが、ちょっとボールを動かして振りぬいた右足からのシュートは三浦弦太とファビオの間を抜けてファーのサイドネットにズドーン。

者席後ろの選手席からは、イングランドのプレミアリーグでゴールが決まった時の様な「イエ~ィ」の声が同時爆発するように沸き起こった。感情の爆心地にいたのはおそらく小出悠太。けっしてサンシャイン池崎の「イエェェェイ」ではなく、男の野太い声が一瞬で重なる「イエ~ィ」で、さすがプロは見るときもヨーロピアンだと感心。みんなが待ち望んでいた嬉しいゴール。あれだけスペースが埋まっている中で、コースを見つけてピシャリとパンチのあるシュートを決めるのだから――それも88分と疲れ果てている時間帯――ウイルソンは戻ってきた。そのあとのアディショナルタイム4分間は長く感じたけれど、時間も手立てもG大阪にはなく甲府が1-0の価値ある勝利を手にした。

の勝利を今後に繋げたいのは当然だけど、次は中3日でホームの浦和戦、そして、中3日でアウエーの札幌戦があって、中5日でアウエーの広島戦もある。この3試合は死闘になる。主力はある程度決まっているけれど、ここに割って入るイケイケ感を持つ選手は絶対に必要。さてどうなりますかの3試合だけど、「イエ~ィ」のパワーや自信で暑さや乳酸を吹き飛ばして突き進みましょう。
(松尾潤)

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