山梨フットボール

「ジュニオール・バホス、ドゥドゥ不在でどう攻撃をするのかを突き付けられ、オーガナイズに振れた針の逆がお留守になった局面の甘さで栃木の割り切りに屈した敗北」【2020明治安田生命J2リーグ第15節 甲府0-1栃木 レビュー】

2020年8月30日 甲府0-1栃木(18:03K.O/ND山梨中銀スタジアム/入場者数2,188人(新型コロナウィルス感染予防対策のため、制限付き)/天候 晴 弱風/気温 29.3℃/湿度 63%)

得点者 51’西谷優希(栃木)

△△△〇●○○△△△○△ ◯●●

木の選手はめっちゃ戦ってた。勢いがあった。そういうところを見習わないといけない。何がなんでも自分たちのボールにしようとしていた」
(松田力)

木戦を見て・・・彼らのプレーで僕らの甘さを再確認できた。そこは次のチャンスに活かしたい」
(荒木翔)

 

合前のアップからエスクデロ競飛王が声を出して盛り上げ、雰囲気を作っていた栃木。

合が始まって直ぐに感じたのは“2年前に苦戦(1分1敗)した町田のサッカーに似ているなぁ”ということ。マイボールになれば直ぐに甲府のDFラインの裏に蹴って、一気に押し上げてくる。伊藤彰監督が志向する”フットボール”ではないが、サッカーであることには違いないし、それに苦戦して負けたんだから効果的なやり方だった。

だ、町田ほどやり込めてはいないものの、前線から2度追い、3度追いするFW、SHのスプリントは町田以上の印象。“ウチにはこれしかない”と思ってやり込んできた強さを見せつけられた。甲府はこれをパスワークとポジショニングで躱せる予定だったものの、蹴らされた回数は少なくない。蹴らされたボールはアバウトになるから栃木に拾われてまた蹴り込まれてしまう。結局、セカンドボールを拾う気迫で負けた甲府は自分たちがやりたいサッカーを思ったほどはできなくてストレスが溜まる展開。左ストッパーでプレーした中塩大貴は「何もできなかったし、クオリティもあまり出せなかった。試合中、チグハグして蹴るところとかみんなでどう前に運ぶのかあまり見えなかったと思います。相手が2度追いしてくることは分かっていたけど、ゴールキックも蹴ることが多くなって・・・もう少し繋がないと相手の足を止める形にはできなかった・・・」と翌日の練習後話した。

田健太と泉澤仁の左サイドはそれでも形があるから深いところで決定機の手前くらいまでは行くものの、右サイドは今津佑太と小林岩魚と太田修介が合わなかった。29分に太田がドリブルから打ったシュートは“点を取る自信がある選手のシュート”という迫力があったけれど決まらず。右サイドの連携は小林がリーグ戦2試合目ということでコンビネーションの浸透が図られていなかったという理由づけもできるけれど、小林自身も前半は右サイドで開いて左足でトラップするから前を向けなかった。ちょっと無理目でも強気で仕掛けないとブロックを作っている栃木のバランスは崩れないし、パスワークだけで崩せるほどフロンターレ的なチームでもない。小林は「前半ボールを貰う位置が悪くて…俺のところにプレッシャーが来るのは分かっていたけど…裏返したかった。ミスを恐れていたわけではないけど、右サイドで仕掛けることを求められていたので、縦に勝負して抜ききれなくてもクロスを上げてもよかったと思う。そういうのを出さないといけなかった。相手に合わせて息が上がって攻撃でパワーを使えなかった」という。

半は若手がボールを失うことやミスをすることを嫌がっているようにも感じたし、セカンドボールを繋ぐのが上手い栃木に対して、甲府は拾う予測も乏しかったし、浮き球を繋ぐ技術も意思疎通も足りなかった。小林は後半には積極的で粘り強いプレーを発揮したが、発揮するのに45分かかったのは修正点であり成長の余地。

半は“山形なら決めてたなぁ”というシャークバイト的な決定機も作られたが、0-0で終えられたのは悪くない結果。両チーム交代なしで迎えた後半に勝負ができればよかったけれど、栃木が前プレ(前からのプレッシャー)をMAXで掛けてきて栃木ペースの立ち上がり。前半からやってきた嫌な記憶があるショートコーナーを連続でやられた。前半3分に栃木の最初のCKでショートコーナーをやってきたときは”山形戦で2発やられたのを見てやってきたなぁ“と思っていて、試合後のZOOM会見で田坂和昭監督に聞くと「山形戦も参考にしたけど、ウチはCKからまだ1点も取ってないから何かやらないと」という答え。CKからの失点は無かったけれど、栃木は流れの中でもセットプレーでもやり切ってきた。

チームが一番傷ついた試合となってしまった栃木戦。世間様の風当たりも相当に強くなっているが、ターンオーバーをやってリーグ戦の経験値が低い選手にもチャンスを与えて育て、ケガ人を減らすやり方が最後は昇格争いに繋がると信じている。

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