山梨フットボール

「今季の成長・進化から続く来季の課題とも戦った山形戦」【2020明治安田生命J2リーグ第37節 甲府0-0山形 レビュー】


2020年11月29日 甲府0-0山形(16:03K.O/山梨中銀スタジアム/入場者数 4,127人(新型コロナウィルス感染予防対策のため、入場可能数の50%以下等の制限付き)/天候 晴 弱風/気温 13.4℃/湿度 40%)

得点者 なし
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年のことを言えば鬼が笑う”というけれど、山形戦は今季の成果も見せたし、今季の続きとして来季の課題――決め切る、勝ち切る――と戦っているようにも感じた。来季の選手構成や伊藤彰監督が来季も指揮を執るかどうかも分からない状況で来季のことを言えば鬼が大笑いするかもしれないが、今季ターンオーバーで成長のきっかけを掴んで伸びた選手たちが残り、伊藤監督との新たな契約が結ばれるという前提で、そう感じた。

季のJ2リーグで14位前後の予算規模の中、ここまでチームを創り、選手を育ててきた伊藤監督が――凄く魅力的なオファーがあれば心配するけれど――この続きをやらない訳がないと”勝手に”思っている。もちろん、クラブとの話し合いで様々な条件面で合意する必要があるが、伊藤監督はヴァンフォーレ甲府の立ち位置を理解して指揮を取ってくれているし、遣り甲斐を感じてくれていると思っているからこそ、”続きをやりたい”という意志があると”勝手に”思い、信じている。

山形戦の先発メンバー。若手が多い中、経験値が高い内田健太(前列左)や松田力(前列左から2人目)がタフに戦って若手を引っ張ったが、勝てなかったことが悔しい。

節の京都戦(1-1△)もオーガナイズの差は見せたと思うが、ピーター・ウタカの個にやられるまでにいくつかの改善点はあった。攻守の切り替え時の”アラート感の不足”ということも言えるが、山形戦はこの点においては大きく改善できたというか、アラート感を持ち続けて戦うことができた。立ち上がりからチャンスを作ることができるのはアキラ・ヴァンフォーレのストロングポイントで、選手の能力と戦術のなせる業。開始15分くらいまでに好意的に見て決定機やその手前の場面は3回あった。ここで決められると有利に進めることができるが山形戦は決められなかった。

の甲府の戦い方は選手にとっては結構しんどい――体力を消耗する――。選手は嫌々やっているわけではないけれど、前線の選手が守備でパワーを使うから立ち上がりはよくても前・後半の中盤から後半になるとアタッキングサードでパワーを発揮できなくなりがち。それゆえにパワーや精度が落ちることがあると感じる。松田力やドゥドゥや泉澤仁はタフな選手で――上手くサボるところもあるけれど――90分間パワーを発揮できるけれど、チーム全体で見れば中盤や終盤は押し上げが足りなくなったり、シュートやパスの精度が落ちたりする。ドゥドゥと泉澤を欠いてからは決定機の怖さが足りない印象があるが、違う形では創れていた。この点はポテンシャルであり来季の課題でもあり、タフな選手がスタメンの座を確保するのか、戦術的にメリハリをつけるのかなど課題解消の方向性に興味がある。

コアは動かなかったけれど前半だけ見ても中村亮太朗の決定機を作る感覚やチームを助けるプレーが随所に出ていた荒木翔の存在感などは来季に向けた期待。守備では今季初めて3バックの真ん中に入った今津佑太の責任感があるプレーは少ないピンチによって目立たなかったけれど、目立たないことが高い評価になる。

0-0で迎えた後半も立ち上がりから松田、中村、武田将平が前半同様にスプリントして前からのプレスをハメに行くことで49分には中山陸のCKから中塩大貴のヘディングシュートも生まれた。中塩は「ちょっとサイドに流し気味に打ったけど、もっとしっかり当てていれば決められた」と悔やんだが、中塩も来季に向けて期待したい選手。普通じゃない独特のセンスや考え方を持っているからミスもするけれど、伊藤監督はそこで芽を摘んでしまわないから成長の余地がある。今津とはタイプが違うからこそ多様性があって面白そうな気がする。

52分にカウンターを受けたときに内田健太に「早よ戻れゃ、オイ!」と巻き舌で怒られた中山陸。プロになって初めて1週間で2試合先発するという経験を山形戦で迎えたが、それまではちょっと外様みたいに感じるプレーもあったけれど、今では守備で2度追いもするしチャージを受けてボールを失う回数も減ってきた。「健太さんに言われたことは気にしないというか、それで試合中に落ち込むことなくやれた」とメンタル的にも強くなっている。彼の本当のストロングポイントはまだ出せてはいないけれど、ボールを失わないことでチームメイトの信頼感が高まり、パスを出してくれる回数も増えている。そうすることで中山がチームメイトを活かすパスを出すチャンスは増えるし、彼自身のシュートチャンスも増える。早生まれの選手だけに今季はプロ2年目ではなく、プロ1年目だと思ってさらなる成長を見守りたい。

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