山梨フットボール

「見た目はガッカリの引き分け試合も、大ケガをしながらも82分間闘った山本英臣の魂籠る勝ち点1」【2021明治安田生命J2リーグ第19節 甲府2-2山口 レビュー】


2021年6月19日 甲府2-2山口(18:03K.O/JITリサイクルインク スタジアム/入場者数 3,093人(新型コロナウィルス感染予防対策のため、制限付き。入場者上限5000人以下、または、収容率50%以下での試合開催)/天候 雨 弱風/気温 23.2℃/湿度 66%)

得点者 51’井川歩(山口) 55’オウンゴール(甲府) 81’神垣陸(山口) 85’泉澤仁(甲府)
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「『キラさん、ダメです』と一言いっていたら代えていた(伊藤彰監督)」

合が終わったときはイライラと失望が入り混じったようなガッカリ的な感情に支配されたけれど、翌日の松本とのTM(45×2本、1-1△、得点者:小林岩魚)の後、伊藤監督に話を聞いて試合中に感じ取れなかった側面を知ることになって山口戦の捉え方が変わった。

点するとパワーが出る”を繰り返して、2度追い付いて引き分けた山口戦。失点して2度とも4分で取り返しているんだから甲府には――対山口という力関係で――力がある。でも、それを勝ち点1を握っている0-0か1-1で発揮して勝ち点3を握ることが1度もなかった…勝ち点ゼロになるとアクセルを踏めた試合。立ち上がりは思った以上の山口のフォアチェックに”寄せが速いなぁ”と思いながら見ていたが、2分に山田陸が前線の三平和司に付けたボールを奪われてカウンターを受けていきなりピンチ。前掛りになっていたので奪われたボールをボランチの背中に通されて、山本英臣がカバーに出るも奪えず、右からクロスを入れられてファーで島屋八徳に決定機。シュートは外してくれたけれど、前で収められずにカウンターを受けると全体で押し上げてサポートする雰囲気というか勢いは出し難い。

の場面だけが攻撃のパワーが出ない流れを作ったわけではないし、直後の5分には泉澤仁の高い位置の守備からボールを奪うと、三平が狭い中でターンしてシュートで決定機と、狙いを持ってやれていた。7分には決定機を作られそうになるが、山田が戻ってカットしてカバーする力の高さを見せた。この日の山田は高い守備力を見せたが、奪ったボールの繋ぎでは――周りのサポートとの関係もあるが――ワンタッチで出したパスが通らずにピンチになることが何度かあって、守備の力を攻撃に繋げることができなかった。

口がサイドを変えるロングパスで逆サイドの泉澤を活かすボールを入れていたが、ビルドアップでは山口の速い寄せでなかなか前にボールを運べず、リスク管理の意図があったと思うが山本がアンカーの位置に上がることも少なかった前半。そして、36分に冒頭に書いた場面が起きてしまう。クロスに山本とGK岡西宏祐が出ていったときに岡西が山本を押し倒すようになってしまった。GKがクロスに出ていくときには起こることだけど、倒れて起き上がる時に山本が手でピッチをバンバンと叩いたことが印象的だった。遠くの記者席から見たときは山本がクリアできると思っているところに岡西が出てきたことに対して怒ったのかと思っていたが――本人には話を聞けていないが――伊藤監督は「あの瞬間に自分がケガをしたことが分かったんだと思う」と話す。

自身の采配について飾ったり言い訳することなく話してくれた伊藤彰監督。もっと分かりやすく大胆な起用でバンバンと勝負してほしいという意見もあると思うが、甲府の立ち位置や選手の質や層でそれを選択すると勝ち負けの波が大きなチームになる。「クラブの予算や規模で負けていてもJ2の上位のクラブと同等に勝負すること目指す。我々の戦力や環境や俺の能力を含めて、堅く勝ち点を取っていくことがウチのクラブには必要。その中で少ないチャンスにチャレンジして昇格を目指す」という伊藤監督。いろいろなことを疑いたくなる状況になりつつあると思うが、若手も成長している中で方向性としては現実的だと思う。何もかも完璧を求めるよりも、甲府の立ち位置でやれていることを評価し、信じて一体感を持つことが昇格のカギになるはず。選手だけでなく、監督も――失礼な表現かもしれないが――盛り上げて育てるのが甲府の立ち位置であり生きる道。フレンドリーな雰囲気は大事にしつつ――ぬるま湯は用意しないけれど――居心地が悪い消去法で選ばれるクラブにはしたくない。

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