柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『偉大なる、しゅららぼん』 ああ面倒臭い、次から次へと後付けの設定・・・で、これのどこが面白いんでしょうか?(柳下毅一郎) -3,643文字-

 

FireShot Screen Capture #050 - '映画『偉大なる、しゅららぼん』公式サイト' - shurara-bon_com

偉大なる、しゅららぼん

監督 水落豊
脚本 ふじきみつ彦
音楽 瀬川英史
出演 濱田岳、岡田将生、深田恭子、渡辺大、貫地谷しほり、佐野史郎、笹野高史

ico_yan 万城目学の小説はやたらと人気で、『鴨川ホルモー』からはじまって京都大阪奈良の関西ファンタジー・シリーズはいずれもテレビやら映画やらで映像化されている。というわけでいくつか読んだり見たりしたわけだけどどいつもこいつも驚くほどつまらない。どこが面白いのこれ……?でもベストセラーなんだよねえ。評価もたいへん高くて直木賞候補だったり、はてさていったいどこが評価されているものやら、と悩むことしきり。しかしそんなことは世の趨勢とはまったく関係ないわけで、今度は舞台は滋賀県、琵琶湖の神から力を得たという伝説の一族の物語。

 

 

15歳、高校に入学することになった日出涼介(岡田将生)は琵琶湖のほとり岩走町にある日出家本家にやってきた。町は日出家に牛耳られ、本家はなんと城に暮らしている。日出家は千五百年前に湖の神から力をもらった。一家には定期的に“力”のある子供が生まれ、“力”を使うと他人の精神をあやつることができる。その力を利用して日出家は町を牛耳って巨万の富を築いたのである。ただし琵琶湖のほとりを離れると力が使えなくなってしまうので、一家はこの町から離れられない。ところで湖の神から力をもらったのは日出家だけではない。もうひとつの棗家も“力”をさずかり、長年日出家とのあいだで抗争を続けてきた。ただし“力”のあるもの同士はお互いに力をおよぼすことはできないという決まりがある。そして“力”をふるったとき、近くにいる“力”を持つ者(これ、いいかげん面倒臭いんだけど、「能力者」とかそういう呼び名にしといてほしかったなあ)は耳をつんざく強烈なノイズを感じる。

ああ面倒臭い。以上ここまで設定。いや、これ書いていてしみじみ思ったんだけど、ぼくが万城目学を面白いと思えない理由がここに凝縮している。つまり、このファンタジー設定、リアリティのレベルがどこにあるのかさっぱりわからないのである。「誰も知らないところにひっそりと暮らして……」にしては嘘のレベルが大きすぎて、まるっきりファンタジーになってしまう。じゃあ何かのメタファーになってるのかというと、延々説明されてもなぜこんな設定なのかって理由がひとつもない。だったらただのこしらえものでしかないではないか。で、この上にさらに無意味な設定がかさなり、それがすべて言葉で説明され、そこに突っ込みがはいって……で、このどこが面白いんでしょうか?

 

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(残り 2599文字/全文: 3678文字)


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tags: 万城目学 佐野史郎 岡田将生 木下工務店 水落豊 深田恭子 渡辺大 濱田岳 貫地谷しほり

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