柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『くらげとあの娘』 場内には山形出身のご老人のいびきが高らかに鳴り響いていたのであった(柳下毅一郎) -3,383文字-

FireShot Screen Capture #015 - '加茂水族館が舞台の映画『くらげとあの娘』公式サイト' - www_kurage-anoko_com

 

くらげとあの娘

監督・脚本 宮田宗吉
撮影 馬場元
音楽 ゴンチチ
出演 宮平安春、派谷惠美、杉山彦々、あがた森魚、山口美也子

 

来ました映画24区」! 庄内キネマ第三回作品は「“クラゲ展示種類数世界一”を誇る鶴岡市立加茂水族館を舞台に描かれるラブストーリー」うーんこれどうなのと毎回言ってるわけだけど、この庄内キネマとつきあってるおかげで庄内地方の食材とか、水族館のこととか知れたんだから、少しはPRの役にも立ってるのかもしれない。まあでもオレとしてはやはり、日本で唯一といってもいい世界に誇れる映画祭を持つ山形県でやんなきゃなんないことか?と思わずにいられない。で、今回だがクラゲと言えばこの人のチチ松村「私はクラゲになりたい」を原案に、音楽もゴンチチが担当。かつてなくメジャー感が強まった映画24区作品ついにメジャーへのブレイクなるか! ってあいかわらずK’s Cinemaのモーニングショーで、客は山形出身(?)の老夫婦ばかりだったけどな!

さて、主人公浩平(宮平安春)は加茂水族館のクラゲ飼育員。面接では「クラゲになりたいです」と言って採用された草食系だ。今日も今日とて港にミズクラゲを取りにいく(ミズクラゲ、展示以外にほかのクラゲの餌になったりもするらしい。さすがにクラゲ映像だけはいろいろ登場して魅せてくれる)。するとそこへやってきた女性。ごついピックアップトラックから似つかわしくない涼しげな女性が降りたち、防波堤のいちばん端(どう考えても立ち入り禁止の危険な場所)で花束を海に投げるさまをじっと見守る浩平であった。

 

 

親戚の少女から一歳になった姪の誕生日に来るように命じられた浩平、おみやげを買おうと水族館の売店に寄る。売店のおばさんから「もうしめるから早くして!」と言われるくらい決められずにウジウジ。ここからはじまって、実はこの映画では「クラゲになりたい」とかふやけたことを言ってる輩がいかに面倒くさい人間なのかが延々と語られる。作者実はクラゲ嫌いなんじゃないか疑惑。浩平をしげしげと見た売店のおばさん(山口美也子)。

「あんた、タダハルさんそっくりだねえ」
「え、父を御存じなんですか?」
「……いや、全然!」

 って何過去を臭わせてるんだよ!このおばさん(大久保さん)モブじゃねーのかよ!ただのおばさんなんだけどな。その夜、姪っ子の誕生パーティに行こうとするが、窓からのぞく明るい家族の団欒に気後れしてそのまま逃げ出す。ふらふら街を走っていると売店のおばさん(大久保さん)がフランスパン屋に入っていくのを目撃。応対した店員は例の花を投げた女性だった。

 

 

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