柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『寄生獣』 映画より先に原作コミックを絶対に読まないほうがいい(柳下毅一郎) -2,647文字-

FireShot Screen Capture #072 - '映画『寄生獣』公式サイト' - kiseiju_com

寄生獣

監督 山崎貴
脚本 山崎貴、古沢良太
撮影 阿藤正一
音楽 佐藤直紀
出演 染谷将太、橋本愛、深津絵里、阿部サダヲ、大森南朋、余貴美子、國村隼、浅野忠信

 

face 原作はもちろん岩明均の同名コミックである。「伝説の名作」とか言われてぎょっとしたけど、気がついたら25年も前の漫画なんで、そう言われてもしょうがないかもしれない。ある日いきなり右手を寄生生物に奪われた新一(染谷将太)は、なし崩し的に人類を捕食する寄生生物たちとの戦いに突入する。

寄生獣 完全版全8巻 完結コミックセット あまりいないと思うけれど、もしひょっとして原作コミックを読んだことがなく、映画を見る前に予習として読んでおこう……と思っている人がいたとしたら、忠告しておきたい。悪いこと言わないから絶対に読まないほうがいい。というか、読むなら映画見てからにすべきである。なぜって、コミックは本当に面白いからだ! この面白い漫画を映画の前に読んでしまうと、どうしたって映画が見劣りしてしまうからである。で、原作抜きにして映画を見れば……まあ、そんなに悪くはないんじゃないかな?

というのも本作はほぼ原作通りに進行する。CGの造形もほぼ漫画に描かれているとおり。『寄生獣』最大のインパクトは自在に変形する寄生生物だった。顔がいきなり巨大な口になって人を食ったり、大鎌になって相手を切り裂いたりする。コミックでは、新一と寄生生物が棒立ちに突っ立って、高速で飛び交う寄生体チャンバラをくりひろげる描写がある。これもまたそのままに再現される。

 

 

これは当然わざとだろう。山崎貴流の原作へのオマージュというわけだ。なぜならコミックでも寄生体チャンバラは別にかっこいいものではなく、むしろ岩明均のアクションの描けなさの象徴であるからだ。岩明均は決して器用な漫画家ではなく、わりとアクション場面で人物が棒立ちになってしまったりする。棒立ちのチャンバラはたしかに斬新だったが、別に新しいからといっていいわけではない。動きのなさは映画で再現するとさらに際立つ。そのことがわからないはずはないので、これはわざとやってるオマージュ。それ以外のアクションがうまいのかというと別にうまくもないんだが、そこはそれ。

問題は……

 

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tags: 山崎貴 岩明均 染谷将太 橋本愛 深津絵里 阿部サダヲ

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