『予告犯』 泣かせに入ったとたんに物語が停滞してしまう、日本映画の宿痾。いい話にしようとか考えちゃダメ (柳下毅一郎) -3,789文字-
『予告犯』
監督 中村義洋
脚本 林民夫
撮影 相馬大輔
音楽 大間々昂
出演 生田斗真、戸田恵梨香、鈴木亮平、濱田岳、荒川良々、小松菜奈、滝藤賢一、本田博太郎、小日向文世
新聞紙で作った仮面をかぶった男が、ニコニコ動画の画面から、視聴者に向かって挑発する。
「これは自分のためにやってるんじゃない……明日の予告を発表する。食中毒事件を起こし、謝罪会見でもまともに謝ろうとしなかったアジサンフーズにきっちり火を入れてやる!」
翌日、アジサンフーズの工場が放火された。ニコ動連続予告犯人“シンブンシ”の三回目の犯行であった!
“シンブンシ”はファーストフード店での悪ふざけやレイプ事件の放言ネタなどSNSの炎上案件で槍玉にあげられた「SNSの敵」に実際に制裁を加えるSNSヴィジランテ。ネタには実際の炎上案件が取り上げられ、非常に生々しい。実際冒頭の予告ネタはスピーディーに演出されてなかなか面白く、「今風の映画としてこういうのもありかな…」とちょっと感心したりもしてたんだよ、途中までは。
https://www.youtube.com/watch?v=-fX-1nyHI3M
これ、原作はジャンプ改連載の人気コミックで、連載中に争奪戦のすえ映画化が決まったものであるらしい。そう聞いていろいろ腑に落ちるものがあったのだが、つまり、物語進行中のフックの部分はたいへんよくできているのである。ただ、解決編になって風呂敷を畳む段になると急激にショボく……後半になって加速度的に物語が失速していくのはフックありきの連載漫画の弊害なのか。もうひとつはまあ、ありがちな泣かせに入ったとたんに物語が停滞してしまうという奴で、もはや日本映画の宿痾とも言える。
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