柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『脳漿炸裂ガール』 もうバトル・ロワイヤル設定は法律で禁止しろ!話はそれからだ! (柳下毅一郎)

FireShot Screen Capture #050 - '映画『脳漿炸裂ガール』公式サイトII全国大ヒット上映中!!' - noushou_jp

脳漿炸裂ガール

監督 アベユーイチ
脚本 吉田恵里香
撮影 神田創
音楽 れるりり、Tatsuya
出演 柏木ひなた、竹富聖花、上白石萌歌、荒井敦史、菅谷哲也、浅香航大

 

 

faceニコニコ動画の関連動画再生回数4000万超! あの“ネ申曲”、ボカロ史上初の実写映画化!」だそうである。そりゃあ史上初だろうよ! ボカロとか何も知らないわけですが、「作詞作曲れるりり」の初音ミク楽曲がニコ動で大人気、で、それが映画化ってなんのことかと思うわけだけど、なんでもボカロ曲ってストーリー仕立てになってるものが多いそうで、これも原案にして小説とかマンガとか書かれているらしく、そういうことなのかな……と曲を聞いてみたわけだけど……いやこれ映画のストーリーと全然関係ないんじゃないの? なんでこの曲を「原作」にこんな映画が作られるかちっともわからないんだが、まああいだにいろいろ「ネ申曲」にむらがった欲の皮のつっぱらかった人たちがいた結果なのであろうなあ。KADOKAWAのDOはドワンゴのド! というわけでできあがったのが……

 

 

市位ハナ(柏木ひなた)が目覚めると小さな檻の中に閉じこめられていた。携帯は圏外。「助けて!」さて、なぜこんなことになったのかというと……憧れのお嬢様学校「聖アルテミス学院」に入学したハナだったが、周囲のリッチさに格差を感じ(なんせ弁当にお重を持って来たりする漫画っぷり)、成績優秀な白リボン組に劣等感を抱いてtwitterに陰口を書く日々である。クラスの人気者、リッチ、ビッチ、パッチ(片目眼帯している謎女)は露骨に彼女をバカにする。そんなハナに唯一優しくしてくれるのは学院じゅうの憧れである成績優秀眉目秀麗な完璧お嬢様の稲沢はな(竹富聖花)。はなは昼食時間に菓子パンをかじってるハナにマカロンをくれる。さて週末には白リボン組だけを集めた「面接」があるという。赤リボン組はさっさと帰らなければならなかったのだが、学校にスマホを忘れた(なんせ授業中にもtwitterをしているダメ生徒)ハナはあわてて取りに帰る。そこでみっともないマントに身を包んだ教師田篠(浅香航大)にとらわれてしまい、気がつくと檻の中にいた。稲沢はなをはじめとする白リボン組も全員一人ずつ檻に閉じこめられている。

みっともないマントを羽織った教師(田篠と二人の教育実習生)は銃を持ち、生徒たちに命じる。

「では第一面接をはじめます。みなさん携帯で“黄金卵の就職活動(ジョブ・ハンティング)”というゲームに登録してください!」
「今すぐ出して!」
「私語は慎むように!」

 と田篠が銃を撃つとどびゅっと脳漿(ぐじゅぐじゅした泡)が飛び出して死亡。はなは携帯を持っておらず、あわや始まる前にゲームオーバーになりそうになったが、ガラケーと二台持ちのハナが彼女に自分の携帯を渡すことで命がつながる。第一の面接とは?

「第二の面接会場がどこかを当てることができたら檻から解放されます。答えは5拓。先生からヒントをあげましょう。これは先生のラブだと思ってくださいね!」

 ヒントとは何か一文字を入れるとその文字が答えの中にいくつ使われているか教えてくれるというもの。たとえば「い」と入れると答えが「二年一組(にねんいちくみ)」なら「1」と返ってくる。うーん……と考えこむハナに対し、はなは一瞬で答えを解いて脱出する。困惑するハナだったが、はなからヒントをもらい

「ラブ」→「愛」→「i」

そうだローマ字にしてiと入れればいいんだ!と謎を解いて脱出。すぐに第二面接会場に行くかと思うと、表で待ってたはなと座って二人でゆったりマカロン食べてた。なんだこれ……?

「あなたが(携帯を貸して)わたしを助けてくれたから、わたしたちは一蓮托生よ」

 これはつまり女の子同士がきゃっきゃうふするのを見て喜ぶアレなんですね? 命の危険にせまられてる中でマカロンのんびり食ってるの見て喜ぶのか馬鹿馬鹿しいと思うのかってとこは人それぞれ、なのかなあ(なんでマカロン、と思ったがそこは歌詞からとったものらしい)。そんなわけでのんびりと第二面接会場へ向かう一行。だがドアの前にセンサーがある。こんなの飛びこえればいい! とジャンプ一番トライした三人組の一人だったが見事にセンサーにひっかかって失格。どびゅっ!

だがそこではなは……

えーこれ要するに最近よくあるタイプの謎のクイズを解いていくとんち映画なんだけど、脱落者はどんどん殺されていって最後の一人になるまで戦わされるいわゆる『バトル・ロワイヤル』設定。またバトロワか! もうバトロワ設定は法律で禁止しろ! 話はそれからだ! バトロワ設定なので学校ひとつ借りて、少女タレント以外はお面かぶったエキストラ集めるだけで映画一本できてしまうんだからこれほど安上がりなものもない。結局、バトロワ設定って安い映画をでっちあげるための口実にしかなってないんだよな。バトロワなら必然性も合理性も必要ない。どうせ誰を殺そうと責任なんか取りゃしない。この映画でも教師三人はひゃっはーしながらどんどん銃をぶっ放して生徒を殺していくんだが、死体は全部仮面をかぶった黒子がずるずると運び出してしまうので後始末など考えなくていい親切設計。第八面接ではついに五人となったが、ここでは各自のプライバシーが暴かれ信頼関係が崩壊してゆく。

 

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