『東京PRウーマン』 「わたしが世界を変えたんだ!」 ・・・おまえの脳天気な思いつきだけで世の中動いてくれるわけじゃないんだよ!(柳下毅一郎) -4,234文字-
『東京PRウーマン』
プロデューサー 丹羽多聞アンドリウ
監督 鈴木浩介
脚本 林誠人、加藤淳也
撮影 唐沢悟
音楽 遠藤浩二
出演 山本美月、山本裕典、桐山漣、袴田吉彦、LiLiCo、佐藤ありさ
「落ち着け、わたし」
三崎玲奈(山本美月)はパニックに陥っていた。今はPR会社VECTOR社の転職面接真っ最中。そもそも彼女が銀行職員という堅実な職をなげうって女子に人気のPR会社を志望したのは男のためだったのだ!
VECTOR勤務の親友(佐藤ありさ)から合コンに誘われた三崎、「年収二千万円クラスの医者や弁護士揃えといたから」と言われてしぶしぶ参戦するや、現場では誰よりもはしゃぎまくり、しまいにはそこで会ったイケメンにリバースする始末。ところがそのイケメンがユニバーサル・インポート社の社長武藤(桐山漣)だと知るや彼にロックオン!
「ぼくは銀行員だけは嫌いだなあ。独立するときはどこも難癖つけて金を貸してくれなかったくせに、会社が軌道に乗ったら揉み手で近づいてくる……で、きみはなんの仕事してるの?」
「あ……わたし、PR会社です! 彼女(親友)と一緒に働いているんです」
というわけで是が非でも受からなければならないこの面接。だが面接はボロボロだわ社長(袴田吉彦)からは
「きみ恋人いる? いやこれはセクハラじゃないよ。充実した恋愛は脳を活性化させる、というのがぼくの持論なんだ」
と完璧なセクハラ面接を受けるなどさんざん。ちなみにこの女、実は学生時代からの腐れ縁の恋人がいるにもかかわらずこの行動。完璧なクズである。同じこと何度も言ってる気がするが、例によってここでもひどい女性差別っぷり。「女性に人気のPR会社」とか言ってるおまえがいちばん女性を馬鹿にしてるんだっつーの。山本美月にちょっと同情したくなるくらい、実にもって最低の主人公なのである。
ボロボロの面接のダメ押しに、帰り際にヒールが折れてこけてもうダメ……と完全にあきらめていた三崎。ところがなぜか採用の通知が来る。
「わたしの計算では、あそこでヒールが折れて転ぶのは二億二千万分の一の確率だ。それだけツイてない人間は、このあとはツキが来る可能性が強い」
と社長はまったく無根拠な謎理論をふりかざす。鶴の一声で無能女を採用され、教育係まで押しつけられたトップクリエーターの草壁(山本裕典)は迷惑顔だ。
だがしかたないので三崎を連れてブティックに行き
「この業界は印象が大事だ」
とメイクと衣装をなおさせる。『プリティ・ウーマン』風に……と言いたいところだが全部自前だからね。そして化粧も服も、シックになるのではなくケバくキャバキャバしくなるように変えさせるところがなんとも。そしてTBSに行くとになると
「おい、あのエロい服にしろよ」
とわざわざミニスカに着替えさせて足を露出させる。テレビ局には宣伝担当として売り込みに行くことが多いので、そういうときには女を使うのがいちばんの早道だ! というので香水をふりかけて挨拶に行くと、テレビ局員はいっせいにむらがって……
いやこれテレビ局員にもパブリシティウーマンにもたいがい失礼だろ! と言いたいところだがこの映画の製作がBS-TBSなので、まあTBSはこういう会社だと理解しておけばいいのか。一応三崎が
「大成功! てか安いぞ、男たち」
と突っ込みを入れるんだが、おまえもたいがい安いっつーの。
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