柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『図書館戦争 The Last Mission』 ああ、おままごと。「図書隊」はもちろん馬鹿、お話は輪をかけて白痴。馬鹿に完全に包囲された図書館 (柳下毅一郎) -3,567文字-

FireShot Screen Capture #021 - '映画『図書館戦争 THE LAST MISSION』公式サイト' - www_toshokan-sensou-movie_com_tlm

 

図書館戦争 The Last Mission

監督 佐藤信介
脚本 野木亜紀子
撮影 河津太郎
原作 有川浩
出演 岡田准一、榮倉奈々、栗山千明、田中圭、福士蒼汰、石坂浩二、西田尚美、松坂桃李、螢雪次朗

 

face まさかと思っていたが来てしまった。2013年公開の『図書館戦争続篇である。前作のレビュウでは「続篇ではこのバカップルのラブラブの日々が描かれるらしいので、どうか作られないことを祈るばかり」と書いたわけだが、朗報があります。この続篇でも別にラブラブの日々は描かれたりはしません! 前作に引きつづきの作者たちが反省してラブ要素を抜いたから? いやいや、実はツンデレと鈍感という岡田榮倉コンビは映画一本イチャイチャしてそのあと何年か時間がたっていたにもかかわらずいまだにくっついておらず、榮倉に至っては親友栗山千明に

「半年前に買ったプレゼント、いいかげんあげなさいよ!」

 と言われても照れまくって「無理~」とか言ってる始末。どんだけカマトトなのか! おかげでさらに二時間にわたって延々ツンデレな恋の鞘当てを見せられる羽目に。それだけでも死にそうなのだが、本筋のお話が、それに輪をかけて白痴なので、もう、どうしてくれようかと……

さて前作から数年後。笠原都(榮倉奈々)は一人前の図書隊員として図書館の蔵書を守るために活躍している。今日も今日とて検閲対象になった本を印刷所から図書館に運びこむ最中、図書館でメディア良化隊に襲われて激しい銃撃戦をくぐり抜ける。なんでそんな社会において検閲対象の本が印刷できるのか(なにやらベストセラーシリーズの何冊目からしい)、なぜ良化隊はわざわざ本を図書館に運びこませてから銃撃をかますのか(路上にバリケードを築くだけでいいはずなんだが)、そういうことを問うてはいけない仕組みである。だが図書隊のほうは彼ら馬鹿な良化隊に輪をかけて馬鹿なので、頭がいいか悪いかものを考えるか考えないかは読書量とはまったく無関係ということだけはわかるのである。

 

 

 

笠原は夜仕事中、同僚の隊員に頼まれて段ボールを運ぶ。だが途中、相手が

「こんなことをしていても何も変わらない……図書隊なんて役に立ってるのかな」とぼやくのを聞いて激怒。

「役に立たないって思ってるなら、さっさと辞めちゃえばいいじゃない!」
「……そうするよ……」

 一人になった隊員、おもむろに運んでいた段ボールに火をつける。後日、週刊誌が「図書館内で焚書行為!」のスクープ記事を掲載する。なんせ図書館内で「焚書」だから大スキャンダルなのだ! 犯人が共犯者として名指ししたのが笠原だった! というわけでさっそく査問にかけられる笠原。

「運ぶのを手伝っただけで、段ボールの中身は知らなかったんです! 信じてください!」
「彼はきみが共犯だと名指ししたよ」

ネチネチと尋問する図書隊幹部。ちなみに犯人は共犯者を名指ししたのちに逃亡したので、彼女の証言と付き合わすことは出来ないのだという。

 

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