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柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『Cutie Honey -tears-』 いやはや、ここまで酷い企画があろうとは!誰が望んでこんなもんが作られるのか、東映幹部の頭の中を覗いてみたい(柳下毅一郎)

公式サイトより

 

Cutie Honey -tears-

監督 A.T.、ヒグチリョウ
原作 永井豪
脚本 中澤圭規、田中靖彦
撮影 大塚雄一郎
音楽 北里玲二
出演 西内まりや、三浦貴大、石田ニコル、高岡奏輔、仁科貴、倉野章子、笹野高史、岩城滉一

 

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いったいなぜ、東映はこんな映画を作ろうと思ったのか? それがまず最初に浮かぶ疑問である。ほとんどの人がそうだろう。もちろんAVEXは西内まりや主演の映画が欲しかろう。それは当たり前のことである。だがそのときに「じゃあ『キューティーハニー』にしましょう」と言い出したのは誰なのか。たいていの場合、こういう訳のわからない企画は過去の成功体験に基づくものである。でもじゃあ『キューティーハニー』の映画化と言えばアレだよ、庵野秀明監督でもアレだったアレ。あれじゃなく、じゃあ永井豪原作で東映の映画っていうと?……『デビルマン』? なんでこんな映画企画にゴーサインが出たのか本当にわからない。西内まりやって時点でもちろん膝から上に足が上がらないキックとか見せられることになるのはわかってるわけで、女性アクションじゃなくったって女性を主人公にした映画くらいいくらでもあるでしょう。なんでわざわざこんな企画を考えたのか……

 

時は未来。なぜかハイライズ化した日本は高層階に住むエリートとスラムと化した低層部に住む貧民層に二分されていた。高層階の住民が排出する有毒物質が雲となって低層階の住人に終わりなき酸性雨を降らす……って何年前のSF映画だよ! この賞味期限切れの設定が例によって廃工場をフード姿の人間がうろつく……みたいな感じで安く映画化されるわけである。いや本当に誰が望んでこんなもんが作られるのか、東映幹部の頭の中を覗いてみたいよ。新聞記者の早見(三浦貴大)は下層階で人々を救う救世主とあがめられている謎の存在を追いかけている。ある日レジスタンスが逮捕される現場に居合わせた早見、ダフト・パンクみたいなヘルメットをかぶったロボット兵士“ソドム”がレジスタンスを逮捕するところをなすすべもなく見守っていたが、そこにあらわれた仮面が兵士たちを殴りたおして逮捕されていた男を救い出す。実はレジスタンスの仲間だった早見は仮面を脱いだ美人のあとをつける(これ、簡単に発信器つけられてあとをつけられているのはなんなのか)。彼女ヒトミ(西内まりや)は老夫婦と暮らしていた。

ヒトミの出現を知った高層階の支配者アンドロイドのジル(石田ニコル)は、ソドム軍団を送りこみ、彼女を確保しようとする。老朽化したAIを再生するためにはヒトミのもつ空中元素固定装置が必要なのだ(しかしAIって老朽化したりするものなのか?)かたや早見はヒトミを説得し、レジスタンスに協力させようとする。彼らはAIを破壊することで有毒物質の雲をとめたいと考えていたのである。このまま有毒物質が放出されると下層階の住人たちは全滅してしまうだろう……

いやもうダフト・パンクとかレジスタンスとかAIとか「人間を部品としか思ってない」冷酷なロボ支配者とか出てくる設定すべてが手垢がつきすぎていて閉口する。もちろん映像的にもそこらへんの街角を撮って上にCGでスクリーン映像をかぶせただけ(白組……)。原作とまったく無関係な新しい設定、新しいストーリーを作っておいて、最後まで新しいネタが何ひとつ出てこないというんだからすごい。ヒトミは製造者である如月博士(岩城滉一)から「逃げろ、どこまでも逃げろ」と命じられたので、基本的には逃げることしかしたくない。レジスタンスへの協力などもってのほか。かたや早見はAIのあるビルごと爆破するというリーダーの計画に「そんなことをしたら無関係な犠牲者が出る。テロリストと同じだ」と反対し、ヒトミの力を借りてサーバールームに潜入してAIをコントロールし、有毒物質が雲として排出されることを止めようと考えている……というんだけどさ、それ排出をやめた場合、有毒物質はどこにいくの? 映画を見てるかぎりでは上層階にぶちまけようとしているようにしか思えず、あの、きみのやってることもどう見てもテロだよ?

 

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