『忍性』 だからどうというわけではなく、忍性の人となりも業績もわからないままだけど、それがカエルカフェ映画なのだからしかたない (柳下毅一郎)
→公式サイトより
『忍性』
企画・制作・監督・配給・宣伝 秋原北胤
脚本・技術統括 落合雪恵
音楽 三柴理&Clara(THE金鶴)
出演 和泉元彌、小林恵美、綾田俊樹、松田洋治、大谷みつほ、今村祈履、スティーブ・エトウ
カエルカフェ映画、ひさびさの登場である。しばらく噂を聞かなかったからついに諦めたかと思っていたが甘かった。バリバリの新作であります。主演はなんと和泉元彌! だが、今回驚いたのはそこではなくて音楽:三柴理&Clara(The金鶴)って三柴理? あのエディ三柴? オレが筋少脱退記念ライブを旧新宿ロフトに見にいったエディ三柴なの? なんでこんなことやってるんだよ! てかこんなところで巡り逢うとかどんな因果のめぐり合わせなんだ! もうなんかいろいろお腹いっぱいになってしまったわけですが(と思ったら実は何本か前から付き合いはあったようで、やはり白石ひとみつながりか?)。
さてカエルカフェ。詳しくは『家』のレビュウを読んでほしいのだが、脚本家落合雪恵(白石ひとみ)と監督秋原北胤の二人三脚で生み出される低予算映画シリーズ、今回は鎌倉時代の高僧良観房忍性の伝記映画ということで珍しく原作なしの完全オリジナル作品らしい。しかも明治期とかのあいまいな感じじゃなくて、完全な時代劇である。どうするんだ? と思ったが、秋原北胤の得意の人たらし術で鎌倉極楽寺ほか忍性ゆかりの寺の協力をとりつけ、あとはほぼ路上で撮影するというあらっぽい手段でなんとかやってしまった。衣装は「なんとなく時代劇」ということで考証とか無関係に着物を集め、服装とかセリフとかは、まあ……ええと、忍性というのは鎌倉時代の律宗の高僧で、貧民やハンセン病患者の救済にあたったことで知られている。日蓮のライバル、政敵でもあったらしく、そこらへんの話を突っ込んでくれれば面白かったのかもしれないんだが、残念ながらこの映画には登場しない(北条重時と深い関係があったというのだが、カエルカフェ映画で鎌倉執権なんて描けるわけがないんで)。なので話としては師である叡尊から「もうちょっと勉強せいや」と言われては「一人でも人を救わなければならない!(学問とかしてる暇はない)」と断るというものすごく簡素化されたストーリーに……
ときは一二三二年。鎌倉幕府執権北条泰時は「御成敗式目」をさだめ、鎌倉政権の基盤をかためたが、天候不順で全国的な凶作が続いていた。「武士」の家に押しかける「農民」たち。
「こう悪天候ばかりで納める年貢もありません」
「この時期に霜だと? それは天変地異だな」
まあほぼそんな感じで、時代感もクソもないセリフが続きますがカエルカフェだからしょうがない。しかも「てえへんだ~これでは稲が育たない!」と絶望している場所が刈入れ後の枯れた切り株が並ぶ秋の田で、いやそれは育たないよ! てか収穫できてるよもう! 外景はほぼここでの撮影なので、時間経過がまったく感じられない不思議な魔術的空間が現出する。まさしくカエルカフェ映画。そんな中、少年忍性の母は重病で死の床にあった。
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