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柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『天使のいる図書館』 地方発映画と図書館は相性がよいのでは。読書好きの善男善女に向けた図書館映画、これから増えてくるのかもしれない (柳下毅一郎)

 

天使のいる図書館

監督・編集 ウエダアツシ
原案 山国秀幸
脚本 狗飼恭子
撮影 松井宏樹
音楽 佐藤和生
出演 小芝風花、香川京子、森本レオ、横浜流星、森永悠希、小牧芽美

 

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奈良県葛城地域発! 大和高田市、御所市、広陵町などの市町村が一致団結して製作した街おこし映画。まあ地方発映画となるとどうしても市単位になりがちなのだが、予算のことなど考えるならこういうやり方もあり、というか地域エゴの問題がないならベターだろうなあ。もうひとつ、気になったのは図書館映画という存在である。『海すずめ』もそうだったが、実は地方発映画と図書館は相性がよいのではなかろうか。この映画の中でも語られるが、図書館には地域コミュニティの中心という役目もある。ドラマも作りやすいし、蘊蓄をふりまくにも都合いい。読書好きの善男善女に向けた図書館映画、これから増えてくるのかもしれない。

 

主人公、吉井さくら(小芝風花)は広陵町立図書館の司書をしているちょっと変わった女の子。知識は豊富だが人間的感情がまったくわからないので、レファレンス・デスクに座っているのだが、「泣ける話ないですか?」とやってきた女子高生に『拷問辞典』を勧めて大パニック!みたいなことを毎回やっている。文節を区切って喋るのがコンピュータの合成音声っぽいんだが、それ以上に「何が泣けるかというのは主観的でわかりませんが、痛みはすべての人間にとって同じような効果を……」とか屁理屈で返すところがサイコパスそのものでいろいろかなりヤバい。映画の中では「ちょっとズレてる人」くらいの扱いなんだけど、感情の機微がわからないとかってレベルじゃないよこれ。

上司に叱責されて「泣ける話ってなんだろう?」とググってみたりするさくら。てかその智慧はあるのに、なぜ『拷問辞典』……わざとだろ! 弟に訊ねてみると、「泣く本はわからないけど、泣いた映画ならあるよ。図書館には天使がいるって話なんだ。DVD貸してあげようか?」と言われて出てきたのが『ベルリン・天使の詩』。どうやらこの映画自体のモチーフともなっているらしいんだが、あれを「図書館に天使がいる映画」と要約されるとは思わなかった。なお、上司のほうも、彼女がなくした本を「弁償します!」と言ったら「お金を払えばいいってもんじゃない! ちゃんと考えなさい!」とサイコパスには絶対に通じない説教をしたりするんで、どっちもどっちの部分はありそう。のちに本が発見されると、上司は一ページずつアイロンをかけて「本には読んだ人の気持ちがこもってるんだから」的な説教をするんだが、そもそもさくらは夜遅くなるまで本探してる描写もあったし、肝心のブツが『龍馬が行く』の文庫版だから全然説得力ない!(そしてサイコパスはますます混乱すること間違いない)。

 

 

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(残り 2008文字/全文: 3175文字)


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