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柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『コスメティックウォーズ』 「ステマ最高! 広告代理店って素敵!」 ・・・キャストやスタッフはもとよりかかわった企業まで馬鹿に見えてくるので誰も得しないステマ映画 (柳下毅一郎)

公式サイトより

 

 

コスメティックウォーズ

プロデューサー 丹羽多聞アンドリウ
監督 鈴木浩介
脚本 清水有生
撮影 唐沢悟
音楽 遠藤浩二
出演 大政絢、奥菜恵、渡部豪太、井上正大、柊子、尚玄、高岡早紀

 

 

face丹羽多聞アンドリウ案件である。TBSのプロデューサー、現在はBS-TBSでドラマを作っている丹羽多聞アンドリウといえば、1) F1層女性観客向けに 2) スポンサーへの限りない媚びをにじませて 癒着と闇と女性蔑視しか感じられず鑑賞後に底知れぬ徒労感を与えてくれる作風で有名である。たとえば東京PRウーマンでは、ステマ騒動で有名になるベクトル社を舞台に「ステマ最高! 広告代理店って素敵!」と臆面もなくうたいあげるステマ映画であった。そんなわけで今回はコスメ業界が舞台!

 

 

「一人前の経営コンサルタントを目指し、新米の産業スパイとなった三沢茜(大政絢)は、経営コンサルタントの上司で恋人の坂本剛(渡部豪太)の指示で、老舗化粧品会社の新入社員となって潜入する」

って全然意味がわからない! なんで経営コンサルタントをめざして産業スパイになるんだよ! でも本当にそういう話なのである。茜は「20億円を電話一本で動かせる一流経営コンサルタント」の弟子件愛人で、USBにつなぐだけでパスワードでもなんでも割ってくれるスーパーハッキングマシーンを手に産業スパイ活動にいそしむ。だからなんで産業スパイなんだよ。

「経営コンサルタントの仕事はクライアントが求める情報を提供することだろ? ライバル企業の内部情報はいちばん欲しいものじゃないか」

それはそうだが経営コンサルタントってそういうことじゃないだろ! だがジゴロ坂本のSEXにとりこじかけのあけくれな茜は子供もだませそうもない屁理屈を簡単に信じこむ。そこで入社したのが化粧品会社アルビオン。ライバル会社はアルビオンの看板商品であるスキコン(スキン・コンディショナー)の成分レシピを欲しがっているわけだ。だが、すべての女性のためにと頑張るアルビオン社員の仕事ぶりに打たれて自分の来しかたを反省しはじめる……という筋立てでスポンサー様であるアルビオンがいかに素晴らしい会社であるかが語られるはずなんだが……

社内にいる協力者峰岸(奥菜恵)の手引きで無事商品開発課に配属された茜。終業後、課長のパソコンを万能ハッキングマシーンでパスワードを抜き、データを盗みだそうとするが、そこで峰岸がストップ。

「それはダミーよ! そのフォルダに触るとパソコンのカメラで顔写真が撮られるのよ。研究所の開発者を狙いなさい」

と言うと都合よく担当者が事故にあって、茜がスキコンのプランナーに決定する。この映画、いろいろ都合よくことがまわり、どうやら峰岸が全部手をまわしているらしいのだが、あまりに有能すぎて、無能きわまりないアーパー女子茜など最初からいないほうがいいのでは、と思えてくるレベル。まあいつでも切り捨てられる捨て駒扱いってことなんだろうが、茜の尻拭いしてるあいだに峰岸一人で全部データぶっこ抜けそうなんだけどなあ。

勇躍研究室に乗り込んだ茜。だがスキコンの担当者中野渡(高岡早紀)は人間嫌いで取り付く島もない堅物。

「帰っていいわよ」
「はあ……って、わたし、そんなキャラじゃないですから!」

と持ち前の負けん気と楽天性(空気読めない力ともいう)で食い下がり、なんとか懐に入り込もうとする。ところで商品開発課のプランナーって、どんな製品を作るかの設計図を書く立場なんだと思うんだが、この映画の茜はただの御用聞きにすぎず、何ひとつ製品製作に関与していない。会社のもっとも重要な製品の開発担当を元気がいいだけの無能新入社員にまかすとか、アルビオンの将来が不安になるよ。

 

 

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(残り 1450文字/全文: 3014文字)


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tags: 丹羽多聞アンドリウ 井上正大 唐沢悟 大政絢 奥菜恵 尚玄 柊子 清水有生 渡部豪太 遠藤浩二 鈴木浩介 高岡早紀

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