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柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『君の膵臓を食べたい』 陰キャラでコミュ障なのが強さの表現として称揚されるとか……オタクのお姫様願望も極まれり (柳下毅一郎)

公式サイトより

君の膵臓を食べたい

監督 月川翔
原作 住野よる
脚本 吉田智子
撮影 柳田裕男
音楽 松谷卓
出演 浜辺美波、北村匠海、大友花恋、北川景子、小栗旬、矢本悠馬

 

face ラノベ投稿サイトから発掘されて発売即80万部のベストセラー、本屋大賞でも第二位になった人気青春小説の映画化ということでさっそくの大ヒット、中高生が泣きにきてたいへんなことになっている映画である。いやあこれが今風のラノベって奴なんですねえ。勉強させてもらうこと多々。

何が今風かというと、主人公が徹底的に受け身であるところだ。この話、クラスで人気者の女子のヒロインが膵臓の病気で余命幾ばくもないことを主人公が知ってしまったことから、他人とかかわり合いをもたない主義だった主人公が秘密の共有から恋愛関係にいたるというストーリーである。主人公は何もしたくないのに、ヒロインに引っぱりまわされて二人きりで秘密旅行まで行ってしまう。ところが、その受け身さが物語の中では「強さ」だと認識されているのだ。ヒロインは「人とかかわらないで一人で生きられる君の強さに憧れた」と言う。人と関わるのが怖いから一人でいるわけではないのだ! まあどれだけお姫様なのかという話である。

実はこれ、少女漫画でなら珍しくない人間関係である。なんの取り柄もない地味な女子高生がひょんなことから学園の王子様に見初められて……というパターンのお話、何度読まされてきたことか。だがこれは受け身の主人公が男なのである。陰キャラでコミュ障なのが強さの表現として称揚されるとか……オタクのお姫様願望も極まれり。

 

情熱も意欲もないダメ現国教師の僕(小栗旬)は、今日もやる気のない授業を続けている。ちなみに授業では『星の王子さま』を教えてるんだが今時の学校ってそんなもんなんですか? なおこの映画の中で二人が読んでる本はほぼ『星の王子さま』だけ! そんな読書家は嫌だ! ところでそんな“僕”も学校が誇る図書館が老朽化のため取り壊しとなったとき、元図書委員の経歴を買われて図書の整理をやらされることになる。JIS分類をそらんじている“僕”、たちまち生徒の尊敬を勝ち得て「ひょっとして一人で図書館の整理をやった伝説の図書委員って先生のことですか?」

「まあもう一人、役に立たない助手がいたけどな……」

 というわけで話は十二年前にさかのぼる。盲腸で病院に入院していた“僕”(北村匠海)は、待合室で「共病文庫」と書かれたノートを拾う。何気なく中を見ると「わたしは病気でもうすぐ死ぬ」と書かれているではないか。そこに慌てて飛び込んできたのは同級生の美少女桜良(浜辺美波)。同級生とはいえ、クラスの人気者である彼女と、「誰ともかかわらないことで、自分の領域を守っていた」僕とのあいだにはまったく接点はなかったのだった。ところが翌日、彼女は“僕”を呼び出し

「わたしの残り少ない人生の手助けをさせてあげます」

 

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(残り 2241文字/全文: 3447文字)


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