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柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『36.8℃』街の中でたったひとつ栄えているイオンでこの映画を見せられるときほど、加古川市の未来が心配になったことはない。これでよかったんですか市長……(柳下毅一郎)

公式サイトより

 

 

36.8℃

監督・脚本 安田真奈
撮影 武村敏弘
音楽 西山宏幸
出演 堀田真由、岸本華和、西野凪沙、安藤瑠一、陣内智則、渡辺真起子、寺脇康文

 

face 世の中には人の依頼を受けると人跡未踏の山奥まで出かけ、ひっそり咲いている花を引っこ抜いて持ってくるプラントハンターなる職業があるという。ならばぼくは地の果てまで出かけて誰も見ないのにひっそり上映されている映画を見つけ、無理矢理レポートするシネマハンターになろう。というわけでやってきたよ兵庫県の西の果て加古川市。ここ加古川のイオンシネマ加古川で加古川ご当地映画が上映されているのだった。

実は本作、ただの地方映画ではない。企画・製作は映画24区。かつて『乙女のレシピ』という史上初のたきこみごはん映画を紹介したが、これで味をしめた映画24区、地域×食(+高校生)×映画という新たなる映画方程式を発明、ぼくらのレシピ図鑑シリーズとして定式化したのである。つまり地域の食材を使って女子高生がキャピキャピしながら料理する映画を作れば、地域のプロモーションにもなるし女子高生好きのロリコンはほいほい寄ってくるしで大勝利間違いなし!てなことを地域活性化に悩む地方自治体に売りこもうという作戦である。この罠にまんまとかかってしまったのが兵庫県加古川市。加古川シティプロモーション計画とかなんとかで、加古川の観光映画を作ってしまったのだ。

こういう「方程式映画」の何が悪いって、この方程式に固有名詞を代入するだけでところてんのようにおんなじ映画が作れてしまうこと。まさしく映画24区的にはそうやって地方女子高生映画を作りまくろうとしているわけである。今この瞬間にもこの映画を「実績」として映画が売りこまれ、新たな地方発映画が作られつつあるのだ! いやマジで怖いんですけど……

 

 

さて、物語がはじまると、ビルの屋上にあるキッチンで、イチジクのデザートを食べている女子高生三人。高校二年の仲良し三人組は若菜(堀田真由)、中林果樹園ほか加古川に一大王国を築く中林コンツェルンの跡取り娘実果(岸本華和)、「無駄なことはやらない」が口癖のクールな歩結(西野凪沙)。若菜はつきあってる同級生トオルくん(安藤瑠一)との仲がうまくいかず落ち込み中。彼氏と同じ加古川大学に進学志望を出したものの、学力は追いつかず(特に勉強ができるわけではない)勉強ははかどらない。むやみにポジティブな実果とやたらと冷静すぎる歩結のあいだにはさまれて、言いたいことも言えない優柔不断な性格なのだった。自分の本音を吐き出すためにtwitterで匿名アカウントを作り、加古川大学のOGや学生のキラキラtweetを見て憧れをたくましくしている。そんな中、仕事に頑張る加古川大学OGのみすずとメッセージを交換、憧れの先輩としてアドバイスを求めることになるのだが……

なんでこんな映画を作ろうと思ったのか本当にわからなくなるレベルでいろいろ酷い。そもそもこの主人公、優柔不断でウジウジしてる性格なのだが、最初から最後までそのままで何ひとつ先に進まない。最後まで好感を持てないままで、なんでこんな女を主人公にしたのか。さらに酷いのは映画のテーマである肝心の食。こういう映画なんだから、当然加古川にしかない独自の食文化が登場するだろうと思いきや、最初から最後まで登場するのはひたすらイチジク! イチジクを使ったレシピなんかも出てくるんだが、そもそもイチジクなんてそんな珍しい果物でもなんでもなくないか? 本当にそれしか目玉がないのか? いやこれを見るかぎり加古川の名物って加古川、神戸製鋼の工場、イチジク、ブドウ、かつめし(牛カツにデミグラスソースをかけてご飯に載せる加古川のB級グルメ)しかないのである。そりゃあこんなどうしようもない映画にすがりたくもなるかもしれないが、見てると逆に加古川の未来が不安になるよ!

 

 

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tags: ご当地映画 グルメ 兵庫県 加古川市 地方発映画 堀田真由 安田真奈 安藤瑠一 寺脇康文 岸本華和 映画24区 武村敏弘 渡辺真起子 西山宏幸 西野凪沙 陣内智則

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