柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『HK 変態仮面』 -おまえら、変態を舐めてないか? (柳下毅一郎)

 

『HK 変態仮面』

監督・脚本 福田雄一
脚本協力 小栗旬
撮影 工藤哲也
出演 鈴木亮平、清水富美加、片瀬那奈、ムロツヨシ、安田顕

 


 

 HK 変態仮面 1 (ジャンプコミックスDIGITAL) 原作は少年ジャンプ掲載コミック 。気弱な空手高校生狂介は女性のパンティをかぶると超人パワーを発揮する「変態仮面」となるのだ!20年前のマイナー漫画がなぜいきなり映画化されたのかというと、実は小栗旬くんがこの漫画のファンだったからなのだという。だから小栗くんは脚本協力としてクレジットもされているという……だったら出ろよ小栗!パンツかぶれよ!ていうかパンツかぶる覚悟もないような奴が映画化を試みてる時点でだね……

連続爆弾魔を追いかけていきつけのSMクラブに張りこむ刑事たち。爆弾魔の入店を見ていっせいに突入!そこではまさしく爆弾魔が責められている真っ最中であった。銃をつきつける刑事に、異常にテンションの高い(というか絶叫してるだけ)女王様(片瀬那奈)は「商売の邪魔するんじゃないよ!」と怒り心頭。縄を投げるとたちまち刑事は亀甲縛りに縛りあげられてしまう。そのまま鞭打ちされて「こ、これはこれでいい……」と悶えてしまう刑事。運命の出会いであった。刑事とSM嬢という立場を乗り越えて結ばれた二人の一人種こそが色丞狂介(鈴木亮平)。父からは正義の血を、母からは変態の血を受け継いだ変態仮面の誕生である! いや、それはいいんだけど爆弾魔はどうなったんだよ!

たぶんそういう突っ込みは野暮、というか最初からまるっきり想定外なのであって、この映画においては物語の構造などもとより考えられていない。その場のギャグで受ければ終わり。場面転換してはい次はい次……そのギャグが面白ければまだしもなのだが、例によって1ミリもおもしろくない

監督・脚本はコドモ警察に引きつづき福田雄一。そもそもはテレビの深夜枠ドラマ勇者ヨシヒコと魔王の城で注目されたらしいのだが、いまや日本のコメディ映画を一手に引き受ける存在になってしまった(このあと俺はまだ本気出してないだけが待機中)。

これは映画じゃなくてTVバラエティの脚本なんだって延々と文句言いつづけてるわけなんだが、たぶんどこにも通じていないんだろうね。それにしても、これ、本当に面白いの? みんな面白いと思って見てるんですかー!

ある日、転校生の愛子ちゃん(清水富美香)が銀行強盗に巻きこまれ、人質にされてしまう。そこに通りがかった狂介。

強盗「ヘリはまだかー! 逃走用のヘリを持ってこないと人質を殺すぞ!」
狂介「どうしてヘリを持ってこないんですか!」
警察「どこにヘリを降ろすスペースがある?」
狂介「じゃあ、なんでヘリよこせなんて言ってるんですか!?」
警察「馬鹿なんだよ」
狂介「馬鹿なのかー!」

いや別におもしろくないだろこのやりとり。これではいかん、と思った狂介は裏からビルに入って(てか凶悪犯がたてこもってるのに非常線も張ってないのかよ)強盗を取り押さえようとする。強盗一味のふりをするため仮面をかぶろうとして、まちがえて女物パンティをかぶってしまう。そのえもいわれぬフィット感に陶酔する狂介。

「なんだこの肌に吸い付くようなフィット感! おれの鼓動は高まる!もはやパンティとおれの皮膚が一体化している!」

またしても思考がすべて言葉になって流れ出す副音声映画。これが「意識の流れ」という奴か、ジョイスか!いや、たぶんこの人たちはセルフ突っ込みをやっているだけなのだ。ともかく音声で何かが流れていないと放送事故になってしまうので、ひたすら喋りまくる。これまたテレビ的方法論の結果、キャラクターはすべての行動を説明してゆくことになる。

(残り 1799文字/全文: 3299文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

tags: コミック原作 ムロツヨシ 副音声映画 安田顕 小栗旬 少年ジャンプ 清水富美加 片瀬那奈 福田雄一 鈴木亮平

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック