柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『二流小説家』 -まさかの20世紀的日本映画 (柳下毅一郎)

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二流小説家

監督 猪崎宣昭
脚本 尾西兼一、伊藤洋子、三島有紀子、猪崎宣昭
撮影 高田陽幸
音楽 川井憲次
原作 デイヴィッド・ゴードン
出演 上川隆也、武田真治、片瀬那奈、小池里奈、高橋恵子、伊武雅刀、本田博太郎

2012年「このミス」ほかミステリ三冠となったデイヴィッド・ゴードンの『二流小説家』が日本で映画化!というたいへん珍しいかたちでできあがった映画である。ポルノやSFなど手当たり次第なんでも書いて糊口をしのぐ三文作家の元に、死刑囚檻房にいる連続殺人鬼から自分の告白手記を書いてくれないかという依頼が飛びこむ。だが話は予想外の展開を見せて……という筋立ての話がどう脚色されるかは大いに気になるところ。とりわけ合間合間に主人公が書いている三文小説が挟み込まれる趣向は抱腹絶倒で、この小説が受けた最大のポイントでもあるのだが、それをどう再現するのか。

 この話の主人公、金のための書き飛ばしを旨としているだけあって、シニカルだしかなりいい加減なダメ男である。だから次々に登場する訳ありの美女たちにいちいち惚れてしまったりするのだし、そもそもこんないかがわしい案件を引き受けてしまう。そんなダメ男が欲をかいたせいで酷い目にあって……というブラック・コメディ。だからソウル・バスをパクったリスペクトした宣伝デザインと予告編もジャンルへのセルフ・パロディということなのかな……とモヤモヤする頭で考えていた。

(ちなみに知らない人のために書いておくと、デザインの元ネタはオットー・プレミンジャーの『或る殺人』のタイトル  これをパクって知らん顔で済ますことは不可能なくらいの超有名タイトルなんで、「オマージュ」ということなんだろう。だけど「オマージュ」と名乗れば何をやってもいいのか?という思いもあって、どうにもモヤモヤしていたのだ。だいたい、この話プレミンジャーとなんも関係ないやろ!)

 そんな風に思っていたのだから、なおさらこれを見たときの驚きたるや! いや、まさかこんな風に脚色されてるなんて思わないよねこの予告編見て!

 

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