柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『100回泣くこと』 -記憶喪失vs難病 地上最大の決戦、勝つのはどっちだ!? (柳下毅一郎)

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『100回泣くこと』

監督 廣木隆一
脚本 高橋泉
撮影 鍋島淳裕
音楽 上田禎
出演 桐谷美玲、大倉忠義、ともさかりえ、忍成修吾、村上淳、宮崎美子、大杉漣

ico_yan 怪談がなぜ恐ろしいのか、つらつら考えてみるに、それは罪をおかした人間が復讐されるからではないだろう。お岩さんが伊右衛門を呪うのはどう考えても正義の復讐なのであって、恐怖は理不尽だから恐ろしいのである。その意味で、怪談でいちばん恐いのは「親の因果が子に報い」の部分ではなかろうか? 本人にはなんの罪もないのにもかかわらず、「因果」によって人生がコントロールされてしまう恐ろしさ。自由意志が存在せず、すべてが決められていると唱える予定説は我々近代人にとってはとてつもなく恐ろしいものでもある。

さて。

物語はハワイではじまる。晴天なのになぜか傘を持っている男。同じようにたった一人傘を持っている女の子に話しかける。

「やっぱ降りますよね~」

 いきなり話しかけられてたじろぐ女の子。そりゃあハワイまで来てこんなナンパされたらビビる。

「あ、降らない雨はないって言いますし」
「それを言うなら“止まない雨はない”でしょ!」

 二人は結婚式の出席者であった。

「藤井くんに会っちゃったよ~ 聞いてないよ! 心臓止まるかと思った!」

 花嫁「ムースの親友だから呼んだのか~」

いやハワイで結婚式やるのに誰を日本から呼ぶかくらい把握しとこうよ花嫁! ともかく二人は訳ありで。

「佳美、どうするつもりなのよ? そりゃ藤井くんまだフリーだけどさ」
「いや~これが不思議と自分でも他にないなって感じなのよね~」

 二次会では男・藤井くん(大倉忠義)が女・沢村佳美(桐谷美玲)に積極的に話しかけ、ノートに下手な犬のイラストを描いたりしている。

「図書館で拾ったからブックって名前つけたの」
「鳴き声まで描いてくれたんだ(絵の脇にワンと添えてある)」
「絵だけじゃ伝わらないからね」

 って「ワン」って書いてあっても何も伝わらないよ! いやもちろんそういう天然ぽいところがモテの秘訣って奴なんだよね大倉くん! そんなわけで仲良くなった二人。帰り道には当然雨が降る(それにしてもハワイの挙式で、雨の中を出席者がバラバラに歩いて帰るってどんなシチュエーションだよ!)

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tags: ともさかりえ 中村航 大倉忠義 大杉漣 廣木隆一 忍成修吾 村上淳 桐谷美玲 難病

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