柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『桜姫』  -まさかの東映イズムと輝男魂リターン (柳下毅一郎) -3,126文字-

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桜姫

監督 橋本一
脚本 橋本一、吉本昌弘
撮影 田中勇二
音楽 佐藤礼央
出演 日南響子、青木崇高、麻美ゆま、合田雅吏、風祭ゆき、でんでん

 

ico_yan これスターダスト・ピクチャーズ製作なんだよね。スターダスト所属タレントの主演映画を作る会社で、『世界の中心で、愛を叫ぶ』『電車男』など数々の名作をモノにしてきた過去がある。ということは主演タレントの意向と売り方を最大限に汲んだ映画作りがなされてるわけで、なのになんでこんな映画ができたのか、というのが最大の謎なんだよね。

一面の桜(のCG)の中、立っている桜姫(日南響子)。思わず見とれる男に「あれは吉田左門のご息女、桜のように美しいと評判の姫だ」と説明する毛皮にテンガロンハットの男。その夜、桜姫の寝所を襲う男。

「仕事のついでにいただいていくぜ」

 女の抵抗を封じて無理矢理犯す男(青木崇高)の腕には釣り鐘の刺青があった。反発しながらも肉体は男に応じて嫌々ながら絶頂に……翌朝、姫の姿はなかった。そして吉田家の家宝であった掛け軸が消えていた。パニックに陥る左門(野々村真)。

ここまで、典型的な低予算エロ映画で、ともかくセットもなくエキストラはさらにおらず、主要登場人物だけが黒バックの前に浮かびあがるという作り。日南響子は絡みもあるけど露出自体はほとんどゼロでまあね……

そして三ヶ月後。小塚原刑場。生首がごろごろ転がり、はらわたが腐臭をはなつ。その隣にある売春宿「ぢごくや」に彗星のようにあらわれた美女がいた。腕に風鈴の刺青を入れた「風鈴お姫」である。「天女のように美しくえもいわれぬサービス」とたちまちのうちに大人気、三ヶ月待ちとなっている。それまでナンバー1だったお七(麻美ゆま)は面白くなく、風呂場でお湯かけたりの低レベルな嫌がらせを続けている。風鈴お姫に狂う男は引きもきらず、元僧侶清玄(でんでん)は金もないのに入ろうとして叩きだされている。清玄はかつて小姓と心中して死に損なった過去があり、今は小塚原刑場に住みついている。風鈴お姫こそその小姓白菊丸の生まれ変わりだと信じているのだった。風鈴お姫は寄ってきた客に「腕に釣り鐘の刺青がある男を知らないか?」と訊ねるのだ。

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tags: でんでん エログロ スターダスト 日南響子 東映 橋本一 青木崇高 風祭ゆき 麻美ゆま

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