『上京ものがたり』 -それはねえだろ・・・華麗なる「西原ワールド」に気が遠くなりそう (柳下毅一郎) -2,958文字-
監督・脚本 森岡利行
撮影 工藤哲也
出演 北乃きい、池松壮亮、瀬戸朝香、岸部一徳、松尾諭、木村文乃
〈西原理恵子映画祭〉というのを考えたことがある。あまりにも西原原作映画が多いので、まとめて見て、誰がいちばん西原の分身にふさわしいかを決めようというものなのだが、あまりにも精神的負担が重そうなので諦めた。ちなみにどんなものがあるかというと
『ぼくんち』(2003) 観月ありさ
『いけちゃんとぼく』(2009) ともさかりえ
『女の子ものがたり』(2009) 深津絵里
『パーマネント野ばら』(2010) 菅野美穂
『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』(2010) 永作博美(これは西原原作ではなく、西原役)
『毎日かあさん』(2011) 小泉今日子
とまあ錚錚たる女優陣が西原あるいは彼女に類する人物に扮している(一部、西原の分身とは言い難いものも含まれています)。たぶんアラサー、アラフォーの女優の演じられるいい役があまりないとかいう事情もあるのだろうと思うが、それにしてもこの映画化ラッシュ、異常というよりない。みんななぜそんなに西原理恵子が好きなのか。かくして築きあげられた華麗なる西原ワールド。これまでいちばん「それはねえだろ……」と思ったのは『毎日かあさん』の小泉今日子だが、北乃きいも西原役者としてはキョンキョン並にありえなさを突っ込みたくなる感じ。はたしてその出来は……?
高原菜都美(北乃きい)は地方出身。芸術の道を志して東京の美大に入学するも成績はサッパリ。仕送りもなく貧乏暮らしを続けている。思いあまってゴミの中の使いかけの絵の具を漁っているところを目撃され、
「お金の儲かるバイトあるよ?」
そんな甘言に乗ってキャバクラでバイトをはじめることになる……というわけでここで描かれるのは西原の美大生時代(時代的には『女の子ものがたり』のあとに当たるらしい)。当然ながら八方破れの西原の学生時代が描かれる……と思いきや。
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