『朝日のあたる家』 – すべてが原発村の陰謀……最後まで絶叫の反原発映画 (柳下毅一郎) -2,841文字-
製作・監督・脚本 太田隆文
撮影 三木本久城、今村互
音楽 サウンドキッズ
出演 並樹史朗、斉藤とも子、平沢いずみ、橋本わかな、いしだ壱成、山本太郎
完成はしたものの劇場から上映拒否が相次ぎ、「原発事故を扱った映画だから上映拒否された!」と監督がblog で訴えて大いに話題になった本作。捨てる神あれば拾う神あり、ロケ地近くの豊川の映画館に続き、東京では渋谷アップリンクで公開。まあこういうときにはいの一番に手を挙げるのがアップリンクである(『ザ・コーヴ』が上映中止になったときも、まず最初にやろうとしていた)。その点では信頼できる映画会社。もちろんぼくも初日、満員の観客に混ざって見てきた。で、はたして弾圧はあったのかという問題なのだが……
平田一家は浜松の近く、山岡市でイチゴ栽培を営む父(並樹史朗)と母(斉藤とも子)、大学生の娘茜(平沢いずみ)と中学生の妹マイ(橋本わかな)の仲良し四人家族。茜はピンク・フロイドとレッド・ツェッペリンが好きな平凡な女子大生(てかそれってどう考えても監督の趣味なんじゃ……)、マイは近所のおばさんの愛犬ブルース(ボスにちなむ)をかわいがり、その息子である「原発お兄さん」が茜に気があるといってはからかう日々。ちなみに「原発お兄さん」は平田家から60kmの距離にある山岡原発(もちろん浜岡原発がモデル)の反対運動に夢中なので冷やかし半分でそう呼ばれているのだった。そんな幸せな日々がある日暗転する。静岡を震度五強の地震が襲ったのだ。停止中だった山岡原発だが、白い煙を吹きだして“爆発的事象”を起こしたのである。だがテレビでは「問題はありません」「ただちに健康に影響はありません」とくりかえすばかり。心配になったマイは「原発お兄さん」を呼んでくる。
「まだこんなことを言ってるのか! 原発はメルトダウンを起こしてる。このあたりも放射能に汚染されてます。テレビも新聞も本当のことを伝えていないんだ!」
「そう言えば福島のときも政府はSPEEDIのデータを持ってたけど隠してたんだわ」(棒)
「お父さん、新聞しか読まないから(真実を知らないのよ)」
「テレビが大丈夫だと言ってるんだから、大丈夫なんだーー!」
と怒鳴るお父さん、この映画、何かというと俳優陣が怒鳴りあう傾向がありますが、別に熱演って怒鳴ることじゃないから! 最近、やたら熱く怒鳴れば演技してるという風潮があるけど、あれ本当にどうにかしてほしいですね。
父親の叫びもむなしく、数日後には家は退避地区に指定され、一家は避難を余儀なくされる。避難先の小学校で「なんで原発なんて作るのかしら」と「原発お兄さん」に訊ねる茜。
「原発はもうかるからだよ。電力会社は大金を使って原発を建てて、どんどんCMを打つんだよ」
「CMってどういうこと?」
「テレビや新聞にCMが出れば、批判的な意見は書けないだろう?」
云々。以下テンプレート的な原発陰謀論が続く。福島のあとでも何も変わっていないのだ!
そんなある日、表で遊んでいたマイが鼻血を出す。医者は「避難生活のストレスのせいです」と言うのだが……
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