柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『人類資金』 -小学生の考えたマネー資本主義。CIAとか闇組織とか、やってることは幸福の科学の映画と同じレベル (柳下毅一郎) -4,015文字-

FireShot Screen Capture #162 - '『人類資金』大ヒット上映中!' - www_jinrui-shikin_jp

 

『人類資金』

監督 阪本順治
脚本 阪本順治、福井晴敏
撮影 笠松則通
音楽 安川午朗
出演 佐藤浩市、香取慎吾、仲代達矢、観月ありさ、ヴィンセント・ギャロ

 

ico_yan M資金とはGHQ(連合国占領軍総司令部)が接収した旧日本軍の莫大な資産で、戦後ひそかに運用されていたとされる。戦後たびたびM資金をめぐる詐欺話が起きたことで有名になった。要するに「M資金からこれこれの大金を融資できる。だが事務手続きにお金が必要で……」と持ちかけるというパターン。噂話ではさんざん語られるものの、実物を見た人はどこにもいないという典型的な都市伝説である。さて、詐欺師真舟(佐藤浩市)は今日も今日とてM資金詐欺にせいを出している。実はM資金の謎を追いつづけて死んだ父への反発から、彼はM資金の存在を信じない詐欺に興じているのだ。そんなある日、真舟の前に石有樹(森山未來)と名乗る若者があらわれる。

「実はM資金は存在します。わたしはあなたが詐欺の口実にしている“財団”のために働いているのです」

 半信半疑のまま指定された住所に行った真舟はいきなり黒服の男たちに襲われる。華麗なクンフーでたちまち男たちを撃退する石。指揮している謎の女(観月ありさ)は

「わたしはあの人を救いたいの……このままじゃ消されてしまう……」
「ありゃ誰だ?」
「市ヶ谷です」

 というわけで地下道を抜けて「あの人」の秘密アジトへ向かった真舟と石。二人の前に黒幕があらわれる。

「そうだな。わたしのことはMとでも呼んでもらおうか」

 とせいいっぱい謎の男を演じるのは香取慎吾。うーん。

「きみには詐欺の腕を発揮してもらおう。M資金から10兆円を詐欺でかすめとっていただきたい」

モテキ DVD通常版  息もつけないオープニング!と言いたいところなのだが。詐欺師が実は自分のやっていた詐欺は真実だったと教えられるという導入はゾクゾクする……はずなのだ、本当は。もう少し考えて撮られていたら。いやこれ話を盛り込みすぎなのか脚色がひどいのか、ただ事件が次々起こるだけの早送り演出。真舟が財団本部に行って、とたんに男たちに襲われて石に助け出されて逃亡して……って一連のシークエンス、なんで石が真舟を財団本部に呼び出したのか最後までわからないんだよ! だって「M」一味と“財団”は敵対してるんだから……相手の本拠地に呼び出してボコらせることで本気だってことをわからせる、みたいな複雑すぎてよくわからない思惑があったとか……でも別に“財団”は真舟をボコる理由はないんだけどね……そして「モテキ」の人のクンフーなかなかつらい。森山未來、たしかに体は動くんだけど、ダンサーだからね……そして観月ありさのアクションとくるともう……素直に香港の役者連れてくればよかったのに。

しかも映画の冒頭でフィリピンで日本軍が金塊を集めている場面が映されてしまうので「本当にあったんだ!」という驚きもない。いやそれ山下財宝と一緒になってない?というのはさておき、どういう狙いなのかいまいちわからない脚色である。長い原作をダイジェストしたからしょうがない……と言いたいところだが、原作者が脚色してるんだよなあ……

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