柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『ハダカの美奈子』 -結局美奈子がひとりでいい湯加減にあったまってるだけなんじゃない? (柳下毅一郎) -2,828文字-

FireShot Screen Capture #154 - '映画『ハダカの美奈子』公式サイト' - minako-movie_com

 

『ハダカの美奈子』

監督・脚本 森岡利行
撮影 釘宮慎治
音楽 野島健太郎
出演 中島知子、階戸瑠季、平嶋夏海、蛍雪次朗、美奈子

 

ico_yanハダカの美奈子時は未来。

え!?

なにごとかと思うよねこれは。『ハダカの美奈子』とはテレビ朝日系列でおなじみ大家族ドキュメント『痛快!ビッグダディ』に登場し、ビッグダディと再婚のち離婚することになる林下美奈子の自伝の映画化。で、主演はオセロの中島知子で、ヌードが濡れ場が……とワイドショーで騒がれておりました。テレビを見ないオレもそれくらいは知っている。で、このキャスティングには問題がひとつあって、美奈子が1983年生まれで現在30歳なのに中島知子は1971年生まれの42歳。まあ四十代でも若々しい女優はいくらもいるでしょうが、中島知子はもともと女優でもなんでもないわけで、お笑い芸人にしては美人なほうかもしれないけど、十歳下の役はどうよ?……と思ってたら、なんとSF。いやーこれは気づかなかった。

時は未来。

美奈子がビッグダディと離婚し、小豆島を離れてから十年後(ということは時は2023年)、ビッグマミィのおおらかな愛につつまれて、子供たちはすくすくと成長していた。長男シオンは五年前に家出して帰って来ず、タレント志望の長女ノエル(平嶋夏海)は東京に出て着エロの仕事をしている。次女キララこそ家事一切を引き受けるしっかりものだが、三女ライムは高校で虐められ……

って誰一人うまくいってないじゃないか! 映画がはじまった時点ですでに子育て失敗してるんじゃないか? まあしかししっかりものというよりはただの粗雑なおばはんにしか見えない美奈子(中島知子)は介護施設では主任として頼られる一家の柱である。食器を投げて暴れて若手職員を泣かせる入所者にも「言葉じゃなくて、心の声に寄り添えばいいのよ」とある意味コミュニケーションを放棄した態度でのぞみ、娘の着エロ仕事にも「きれいな花は崖に生えているのよ。危険をおかさなければ何も手に入らないんだから」と泰然自若。いやそれは相手を信じているというよりは無責任なだけなんじゃ? そしてライムがトイレでパンツをおろしているところを上からバケツで水をぶっかけられる(このシーンちょっとどきっとした)虐めに遭うと「正々堂々と戦いな! あたしは……逃げたけどね!」

 

 

いや逃げるのが悪いとは申しませんが、ドヤ顔で言われても困るわけで。そういうわけで、そこから思いだしたように美奈子の回想がはじまり、高校時代の美奈子(階戸瑠季)が不良に呼び出されてどうなることかと思ったら「友達になろうよ!」って言われて一緒にシンナー遊びに興じ、しまいにシンナーを嗅ぎわけられるシンナーソムリエの能力を身につけ、やがて強引な先輩に身体を許してそのまま結婚するとDV旦那になって……という書籍版『ハダカの美奈子』の内容が断続的に語られていく。DV→セックスのくりかえしで、何度も別れようとしては四人も子供を作ってしまうという壮絶な話だったりするのだが、そこらへんのヘビーな描写はほとんどなく、若き日の美奈子役を演じているグラビアアイドルも脱ぐでも本当に殴られるでもなく、非常に中途半端な作りなのである。『ハダカの美奈子』ってタイトルを使うために無理矢理入れたとしか思えないよ。

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tags: AKB48 SF 中島知子 平嶋夏海 森岡利行 美奈子 螢雪次朗

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