柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『ヒットマン 明日への銃声』 おまえ20万円返してないだろ!亀田大毅主演の任侠映画 (柳下毅一郎) -3,409文字-

ヒットマン 明日への銃声 [DVD]

 

ヒットマン 明日への銃声

監督・脚本 辻裕之
撮影 小山田勝治
主題歌 水季可奈
出演 亀田大毅、岡崎二朗、五月馬、せんだみつお、渡嘉敷勝男、西岡德馬

ico_yan「史上初!現役世界チャンピオン映画デビュー!」だそうである。だが、そう聞いてもまったく快挙と思えないのは、亀田三兄弟の次男亀田大毅の「チャンピオン」に重みがないからなのだろうか。ともかく現IBFスーパーフライ級王者(昨年12月におこなわれたWBA王座との統一戦で、対戦相手が体重超過の失格となったため負けたのに防衛してしまった)亀田二号主演の任侠映画。近年ここまで香ばしい映画もそうはない。いったい誰がこんな企画をたてたのか……と調べてみたら、これどうやら大ボス役で出演もしている岡崎二朗の肝いりらしい。かつて東映や日活でも活躍した岡崎だが、近年はもっぱらヤクザVシネ中心。いろんな意味で想像をたくましくさせられるフィルモグラフィーの持ち主である。正直、現役チャンピオンがそっち系のかたとつきあうのってどうなん?とも思いますが、もはや亀田にそんなことを言ってもはじまらないか。

さてある日、浅草をぶらぶら歩いていた亀さんは、チンピラが寄ってたかって子供に殴る蹴るの暴行をくわえているところに出くわす。

「何しとんねん!やめたれや!」

 得意の右腕で二人のチンピラをワンパンKOする亀ツー。ボクサーってよりはチンピラの喧嘩みたいだったけどな! あ、ちなみに亀がパンチを見せるのは映画の中でここだけなんで見逃さないように! 気絶した子供を抱き上げ、家に連れ帰る亀。話すうちに相手が家出少年だと知る。翌朝、大家(せんだみつお)がためこんだ家賃を取り立てにやってくる。亀は隠れようとするが、臆せず出てゆく少年ケースケは、四ヶ月分の家賃二十万円を現金で支払う。寝ているあいだに空っぽの冷蔵庫も食材で満たし、白飯に味噌汁の朝ご飯まで用意してくれている。このガキ、いったい何者だ? 実を言うとケースケは孤児院から逃げ出してきた少年スリだったのだが、亀はそんなことは知らぬが仏。「親は死んだ」とケースケが言うと「ほなら、遺産か~ 20万円借りにしとく!」と平然としている。

翌朝、縁日でたこ焼きを焼いている亀。そう、亀は浅草一帯を締める神農道の……つまりテキヤ一家松菱会のチンピラだったのだ。

 

「テキヤはヤクザと違う!“きょうしょう”や」という亀だが、ケースケに「“きょうしょう”って何?」って聞かれると「……わからん」。知らないのかよ! ちなみに“侠商”と書くのだとのちに岡崎二朗が説明してくれる。たこ焼きは焼けても売り上げには苦労して会費も満足におさめられない亀。組では満足に金もできねえ!と凹られたりしている。見かねたケースケはスリで稼いでは毎日数万円をこっそり売り上げの中に紛れこませる。

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tags: せんだみつお スポーツ 亀田大毅 岡崎二朗 渡嘉敷勝男 西岡徳馬 辻裕之

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