柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『サンブンノイチ』 -テレビで五分のコントならばそれほど苦痛でもないかもしれない。だがこの映画、二時間もある!(柳下毅一郎) -2,051文字-

FireShot Screen Capture #056 - '映画『サンブンノイチ』公式サイト 大ヒット公開中!' - www_sanbunnoichi_jp

 

『サンブンノイチ』

監督・脚本 品川ヒロシ
撮影 相馬大輔
音楽 樫原伸彦
出演 藤原竜也、田中聖、小杉竜一、中島美嘉

 

ico_yanどんな話かというとですね、ぼくはタランティーノが好きです! それだけ。

原作があるらしいので、すべてを品川ヒロシのせいにするのは酷というものだろう。むしろこんなものにお金を出している側の責任が問われるべきではないだろうか。品川ヒロシ、すでに映画三本目で、しかもそれなりに評価されているというのだから恐れ入る。ぼくは見るのははじめてだが……そもそもアメリカで俳優が映画を撮るのが流行したのは、映画会社が出演作を確保するかわりという側面がある。ジョニー・デップのエゴを満足させてやれば、『パイレーツ・オブ・カリビアン』の続篇に出てくれるから……というわけ。だが吉本が芸人に映画を撮らせてなんのメリットがあるのかと考えると……これがさっぱりわからない。これやっぱり品川ヒロシには映画監督の能力があり、ヒット作を作る才能があると考えているから吉本興業やKADOKAWAは金を出しているんだろう。しかし何をどう考えたら彼に映画を撮る才能があるということになるのか……

さて、舞台は川崎のクラブ〈ハニーバニー〉。雇われ店長のシュウ(藤原竜也)、店員のコジ(田中聖)、常連客の金森(小杉竜一)の三人は、無事銀行強盗を成功させ、金を山分けすべく集まっていた。「外には警官がいる! まだ出ていくのは危険だ!」と言いあって。金は三等分するはずだったが、見張りと運転しかしてないコジが同額なのは不公平だ!とシュウと金森のあいだで話がまとまる。三分の一はいらないだろう……とコジを丸めこもうとするが、コジは逆ギレ。銃を二人に向ける。シュウと金森は「わかった!取り分はおまえが八割、こっちが一割ずつでいい!」とコジをなだめる。コジから銃を受け取った金森は「銃を下の階に捨てに行く」と消える。だがそれはシュウとコジとが示しあわせた芝居であった! うまいこと金森の取り分を減らし、それを二人で山分けしようという魂胆だったのだ。しかるに戻ってきた金森は……

これ、粗筋だけ語れば「分け前をめぐって悪党同士の騙し合い」みたいな話になるんだけど、タランティーノは別にコントやってたわけじゃないよ!延々と面白くもないコントをやって、あげくに「下の階に銃を捨てに行く」とか何を考えているのか。馬鹿が馬鹿を騙したって、「そりゃこんな馬鹿なことしてるんじゃしょうがないな」としか思えないじゃないか。観客の上をいき、期待を裏切るからこそ騙し合いなのではないか。これが「オフビート」な「はずした」コメディなのか。副音声的にすべてを説明し、それに合いの手まで入れていく掛け合いの……漫才?はテレビで五分のコントとして見る分にはそれほど苦痛でもないかもしれない。だがこの映画、二時間もある!

 

443f2910ab9081e6c5fb7aa8c00ee84d2

(残り 804文字/全文: 1986文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

tags: 中島美嘉 副音声映画 吉本興業 品川ヒロシ 小杉竜一 池畑慎之介 沖縄国際映画祭 田中聖 破魔翔 窪塚洋介 藤原竜也

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック