柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『薔薇色のブー子』 「こんなもんでいいんだよ、視聴者はどうせ馬鹿なんだから!」・・・これを日本映画の退廃と言わずしてなんと言えばいいのか(柳下毅一郎) -3,254文字-

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薔薇色のブー子

監督・脚本 福田雄一
撮影 吉沢和晃、吉田淳志
音楽 瀬川英史
出演 指原莉乃、ユースケ・サンタマリア、ムロツヨシ、鈴木福、田口トモロヲ、三浦理恵子、小嶋陽菜

ico_yan悪の存在を感じた。人類が営々として築きあげてきたこの文明をゼロに戻し、人類の叡智を無にかえそうとする悪の力だ。知識こそが人類に許された唯一の財産だと信じる者にしてみれば、人類の知的営為をないがしろにしようとするもの、それは悪である。だからたわむれに人の知性を蔑む妥協の産物はどうしても許せない。「まあこんなものでいいだろう」と適当に手を抜いて、コネとなあなあで仕事をし、その結果どんなものができようとも知ったことではない。どうせ自分が責任を取るわけではないのだし。まさにそういう態度こそが文明の退廃を招くのであり、だからぼくはAKB48にまつわるすべてのことどもが大嫌いなのだ。というか、今日この映画を観ていてはっきりと自覚した。これこそが人類を堕落させる純粋悪である。

本当はこんなものに言及することすらいけないのである。つまり、彼らは言及されることによって命を長らえているのであり、非難されることによって意味のないところに意味を作り出しつづけているのだから。だからこんな連中のことは本来語るべきではないのだが、しかし語らなければ何が起きているのかすら誰にも伝わらない。だからここで語るわけだが……

さて、本作においてヒロイン幸子を演じるのはAKB48の総選挙V2ならず第二位となった指原莉乃、毎日ブーブー文句ばかり言っているのでブー子と呼ばれている。大学に入れば薔薇色の日々が来ると信じていたブー子だったが、大学に入っても相変わらず友人も彼氏もできないままぼっち飯。つまらないので学校にも行かなくなって絶賛引き籠もり中、毎日少女漫画を読む以外にやることがない。母は数年前にエリート商社マン(ユースケ・サンタマリア)と再婚したのだが、ブー子はいまだに相手のことを「お父さん」とは呼ばずにいる。少女漫画読者が集うサイトで自称「ジョニー・デップそっくり」のハンドルネームsparrowと出会い、twitterでメッセージを送りあう仲になった幸子は初めて会う約束をする。22時下北沢というちょっと遅い時間での待ち合わせ。当然お泊まりコースを鑑みて、今日こそ自分は生まれ変わる。文句ばかりの「ブー子」ではなく前向きな人間になるのだ! だがその朝……

 

 

監督は御存じ福田雄一。過去にも俺はまだ本気出してないだけ』『HK変態仮面などの映画でさんざん罵倒してきた現代まんが映画の王である。この人のまったくおもしろくない「テレビ的笑い」には毎度毎度疑問を呈してきたわけだが、そいつが企画秋元康で指原莉乃主演の「企画」を手がけたわけである。これは醜い。これを「映画」と呼んではいけないだろう。これまでも福田雄一作品に見え隠れしていた「こんなもんでよかんべイズム」=どうせ視聴者には難しいことはわからないんだから、この程度で充分だろうという舐めくさった態度が秋元康の大衆蔑視と結びついて世にも醜いものが生まれてしまった。はっきり言うけれど、ここには見るべきものは何もない。ギャグもなければ笑いもない。もちろんプロットもなく驚きも感動もない。ただ無表情なブー子の前に次々に妙な人があらわれては消えていくだけ。で、それに笑い声をダビングすればTVバラエティのお笑い番組が完成するわけだ。こんなもんでいいんだよ、視聴者はどうせ馬鹿なんだから!
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tags: AKB48 ムロツヨシ ユースケ・サンタマリア 三浦理恵子 内田裕也 小嶋陽菜 志賀廣太郎 指原莉乃 田口トモロヲ 福田雄一 秋元康 鈴木福

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