『万能鑑定士Q ーモナ・リザの瞳ー』 周回二周遅れの『ダ・ヴィンチ・コード』・・・それにしても榮倉奈々ってなんなんだろう?(柳下毅一郎)-4,341文字-
監督 佐藤信介
原作 松岡圭祐
出演 綾瀬はるか、松坂桃李、初音映莉子、ピエール・ドゥラドンシャン、村上弘明
さて先週『わたしのハワイの歩き方』という映画を見たあと、某映画監督と飲み屋でばったり会って「いや~あれ凄いよね~」みたいな話になって、それにしても榮倉奈々ってなんなんだろう?と盛り上がったのである。いったい何に出てたんだっけ……?とみんなで考えて
「『余命一ヶ月の花嫁』でしょ!」
「おいおい」
「あと『アントキノイノチ』」
「最近だと『図書館戦争』か」
「なあ、一本でもまともな映画ないの?」
「うーんうーん、『東京公園』?」
「あれも青山さんの映画にしては……ちょっとwikipedia見るか……あっ今もう一本出演作やってる!」
「え?」
「『万能鑑定士Q』に出てるよ!ヤバイこれ見に行かないと……」
というわけで見に行ったわけである。いやなんでいまさらのようにこんな周回二周遅れで『ダ・ヴィンチ・コード』にあやかるがごとき映画が作られちゃうわけよ。日本の映画界って本当謎だなあ……と思ったのだが、映画を観てさらに驚いた! これ松岡圭祐原作ではないか! 松岡圭祐と言えば『千里眼』シリーズで知られるベストセラー作家なのだが、恐ろしいことに映画好きが高じてヒロインのイメージキャストを雇うのは愚か、とうとう映画を作って自作(新作小説)のおまけにつけて売ってしまったという方である。映画が、本の、おまけなのだ。その名も『千里眼 キネシクス・アイ』 なんとぼくはちゃんと見ている上にレビューまで書いているので上記リンクを踏んでみていただきたい。そんな恐ろしい松岡圭祐原作であるので、まあ予想したとおりのことが起こるわけだが、少なくともこっちはモナリザが物語に関係してるし、レオナルド・ダ・ヴィンチの企んだ陰謀も出てくる。これが本物の「ダ・ヴィンチ・コードだ!」と松岡圭祐が思っていたのかどうかは知らないが……
凛田莉子(綾瀬はるか)は驚異的な観察眼と百科事典並みの知識を持つ美人過ぎる鑑定士。ガラス張りのお洒落な鑑定事務所を開き「なんでも鑑定します」の看板でお客を募集している。今日も今日とてやってきた貸しホール業の男。
「あの……このチラシを鑑定してほしいのですが」
チラシの鑑定ってなんだよ!などと莉子は言わず、律儀に手袋をはめた手で受け取ってルーペで子細に検分。
「ホールを借りてトルコ料理の試食会をしたいという申し出があったんですが、マルチ商法に使われるのではないかと心配なんです。とりあえず、このチラシを鑑定していただけないでしょうか?」
とどう考えても鑑定士とは無関係な仕事を差し出すが、莉子は眉ひとつ動かさず「拝見しましょう」と受け取る。
「マルチ商法かどうかはわかりませんが、この食品検査の写真はおかしいですね。バナナの通関をしているところの写真がありますが、その写真にうつっているペンは緑色が発売されていません。つまり、これは黄色いバナナをフォトショップで修正したものです。きっと緑色のバナナが手に入らなかったんでしょう。黄色く完熟したバナナを通関することはありえませんから、通関の写真自体が偽装です」
うーん見事な推理、なのかそれ? まあこれが松岡クオリティ。
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