柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『ホットロード』 すべてが内面の中で一体化してゆく・・・そんなポエムがこの映画のすべて (柳下毅一郎) -2,951文字-

FireShot Screen Capture #020 - '映画「ホットロード」オフィシャルサイト 2014年8月16日公開!' - hotroad-movie_jp

 

『ホットロード』

監督 三木孝浩
脚本 吉田智子
撮影 山田康介
音楽 mio-sotido
出演 能年玲奈、登坂広臣、鈴木亮平、太田莉菜、木村佳乃、松田美由紀

 

ico_yan 原作は紡木たく。一世を風靡した超有名漫画であるが、ぼくはほとんど印象がない、というか積極的に避けてきた。ひとつにはヤンキー文化が苦手だったからである。それでもトライしてみたこともあるのだが、ちっとも面白いと思えずすぐ断念。それまでは少女漫画も少しは読んでいたのだが、紡木たくの登場から一気に読めなくなってしまった。少女漫画はキャラクターの内面を発見した、と指摘したのは大塚英志だが、紡木たくにおいてはそれは極限に達した。紡木たくの漫画では、詩のような独白が吹き出しから自立して絵に添えられている。それは主人公のセリフかもしれず、あるいは単なる内省かもしれず、だが作者による語り(ナレーション)かもしれない。そのみっつのあいだには区別がないように思われる。主人公の内部世界と外部世界とのあいだに区別はなくなり、内世界はどこまでも広がっていく。それが少女漫画の正しい発展段階なのだとする大塚英志の指摘はそのとおりだろう。だが、ぼくにとってはそれはどうにも気持ち悪く、受け付けがたいものだった。だからぼくは少女漫画から遠ざかることになったわけである。

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だがしかしこの内的独白と外的語りとが一体化した語りは、実は映画とはたいそう相性がいいのである。とりわけぼくが「副音声映画」と呼んでいる、登場人物が全員自分が何をどう感じているのかリアルタイムで口に出して喋るタイプの映画だ。そして『ソラニン』や恋愛獣姦青春映画『陽だまりの彼女』で知られる三木孝浩監督は、まさしくそういう映画の名手として知られた存在なのだった。したがって、そこでできあがる映画というのは……

夜明けの、蒼い、道
赤い、テールランプ
去ってゆく、細い、後ろ姿
もう一度、あのころの、あの子たちに会いたい

 予想通りにはじまる能年ちゃんのポエム。もちろん本作の主演は『あまちゃん』でおなじみ国民的アイドル能年玲奈。映像化を拒んできた原作者が「能年ちゃんなら……」と主演を熱望して実現したのだという。それはいいんだが能年ちゃん、若くは見えてももう21歳なわけで、中学二年生の役はどうなんだ?

物語は仏頂面で座っている能年ちゃんの顔のアップからはじまる。万引きでつかまった和希(能年玲奈)だが、同級生と違って泣きもせず昂然と相手を睨みつけている。呼び出された教師に能年ちゃんは告げる。

「母は来ません。今日は誕生日だから男と会ってるんです」
(驚かないでね、先生)

 

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tags: あまちゃん 三木孝浩 副音声映画 吉田智子 太田莉菜 木村佳乃 松田美由紀 登坂広臣 紡木たく 能年玲奈 鈴木亮平

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