柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『オドレイ・トトゥ in ハッピーエンド(2003/米)』 [♪akiraのスットコ映画の夕べ]

 

『オドレイ・トトゥ in ハッピーエンド』(2003/米)
監督 : アモス・コレック
出演 : オドレイ・トトゥ

 

 

a04118f84dfeab9445d074c8a49bfc8a2フランスの田舎から単身NYにやってきた女優志望のヴァル(トトゥ)。着の身着のまま足の向くまま、と、早速ゴミ箱の箒を拾って掃除のバイトを売り込む。住む所もお金もつても経験も無い彼女が、果たして夢を実現できるのか?

おしゃれ女子(一部男子含む)御用達『アメリ』がストーカー映画だと気付かなかった人でも、さすがにこれはヤバいんじゃないかと思うであろう迷惑メンヘラ女の一代記。脚本はトトゥをアテ書きしたのがみえみえのファンシー展開でイタい!どんなかというと・・・

 

<ものがたり>

かつての売れっ子脚本家ジャック(ジャスティン・セロー)は、妻に捨てられたショックから創作活動がストップし、ほぼひきこもりでエージェントに嫌味を言われる日々。ある日花屋の店先でレレレのおじさん風に踊りながら掃除をするトトゥ(以下アメリ)を見かけ、上から目線で同情。実はアメリは所持金ほぼゼロで宿代も払えないため、断りもせずジャックの前庭の花壇に寝泊まりしているホームレスだった!ちょっとそれ極端過ぎませんか!!

ホームレスとはいえ一応女の子。溜まった洗濯物をコインランドリーに持って行くが、タダで使うためにカモ待ち。ちょうどやって来たジャックが目を離した隙に自分の洗濯物を同じ機械に放り込む。乾燥機から取り出す時に近づいて、「あらこれ私のシャツ!パジャマ!パンツまで!一体どういうこと!?」と、公衆の面前でジャックを変質者呼ばわりしてまんまと去るアメリ…すげームカつくんですけど。何も注文せずにレストランでエージェントに送る書類を作り、当然従業員に怒られる(「移民は寄生虫なんだよ!」と言い切るこの男もすごいが)、負けずに「ジャングルが都会なら私はライオンよ!」と捨て台詞に四つん這いで歩み去るアメリ…怖い。

 

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しかしそんなもんではすまなかったアメリの暴走。外から目覚ましの音で起きたジャックは、花壇に寝袋女を発見。夜中に発声練習はするわいびきはかくわ。挙句の果てに花壇にしゃがんで排泄行為!!<いやこれ普通に犯罪では(汗) しかしそれを慌てて写真に撮るジャックもジャック。実はジャックは庭で着替えたり半裸でシャワー(注:水撒き用ホース)を浴びるアメリに欲情する、バイアグラ服用野郎だったのである。

そんなにど貧乏なくせに、怪しい演劇教室で呼吸法を習ったり、フェンシングのレッスンに通うアメリ。金の使い方間違ってるだろ!グレタ・ガルボ命という設定で、わざわざスウェーデン訛りの英語(ドイツ語っぽいんだけど)でオーディションを受けまくる奇天烈さに周囲ドン引き(のはず)。

バイトを増やそうと新しい掃除先を見つけるが、そこは偶然にもジャックの別れた妻の家だった。留守の間に電話を取ると「君の乳首が云々」と変態トークをかましてきたのは、浮気で自分を捨てた妻に未練ありまくりのジャック。こんな感じでもう主役がどっちともヘンなので全く共感できない…。

遂にオーディションで目を付けたプロデューサーから食事の誘い。変わった趣味のオッサンである。パジャマ姿で街に出たアメリは通りすがりのダイナーでトイレを借りると、持ってきた電熱器を使ってドレスにアイロンがけ!(多分)ロリコンのオッサンとディナーを共にするが、誰得な中途半端な色仕掛けで役ゲットをもくろむ。元嫁の高級アパートでオッサンを巻くと、なぜかアメリ萌えのドアマンにタクシーに乗せてもらい、現金までもらう始末…。

どんなに言っても花壇に居座るアメリに業を煮やしたジャックは、力づくで追い出そうとすると突然相手は気絶。目が覚めたアメリは下着姿の半裸。「服を緩めた方がいいと思って…」ってボタン外すぐらいでいいだろう!バイアグラ野郎のエクストリームな行動に激怒しつつも、「私を愛してるって認めれば」とメンヘラ女の面目躍如。必死で否定するジャックはこれまた「当座に」と現金を渡そうとするが、「モノにできなかったからって女を金で買えると思ってるの!?」「寝てる間に手を出せばよかったのに!」と非難ごうごう。もうやだこんな女…。

やはりアメリが好きだったジャックは、花壇に高級枕と高級デリの入ったクーラーボックスを置いて帰還を待ちわびることに。餌付けかよ!こんだけ頭おかしいのになぜか地元の名士なのは、昔書いた自伝的な映画が大ヒットしたから。ちなみに内容は「母が父を射殺して首を吊った」だそうな。それから脱却すべく、アメリをモデルにホームレス女の成り上がりコメディを書いたらエージェントに大ウケ!大手で映画化の話も出たが、条件としてアメリを主役にすること、と全ての権利を放棄する。

一方アメリは件のプロデューサー(懲りてなかったらしい)から遂に役ゲット!本読みに行くと、希望の役じゃない上に、「戦争に関する詩を朗読する。裸で」と言われ、いやいや脱いで陳腐な台詞を読むことに(画面上は鎖骨まで)。正直な話、アメリの裸って誰が見たいんですか…。

そんなアメリに遂に大幸運が訪れる。ジャックのエージェントに見つけられ、ジャックの脚本でハリウッドで映画化決定。もちろん主役。「期待の清純派!」と、とんとん拍子でスターダムにのし上がり、なんとオスカーまで獲得するのであった。「思い続ければ夢はかなう」にも程があるメガマックス展開に目が点

そしてラスト。びた一文上がりをもらえなかったジャックのもとに、今や大スターのアメリが訪ねてくる。当然のように二人は、アメリが持参した真新しい寝袋で愛を確かめ合うのでした。終わり

 

http://youtu.be/0RuaE2JV1sU

 

(スットコ指数80%)

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気が付いたらスットコ映画探求に命をすり減らす日々の翻訳ミステリ好きOL。
好きな映画監督はクロード・シャブロル。

tags: アメリ アモス・コレック オドレイ・トトゥ ジャスティン・セロー 洋画

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