『さよなら歌舞伎町』 お遊戯感のただよう少女漫画レベルのメルヘン歌舞伎町ロマン(柳下毅一郎) -2,601文字-
『さよなら歌舞伎町』
監督 廣木隆一
脚本 荒井晴彦、中野太
撮影 鍋島淳裕
音楽 つじあやの
出演 染谷将太、前田敦子、イ・ウヌ、ロイ、樋井明日香、我妻三輪子、忍成修吾、大森南朋、南果歩、松重豊
2015年度『映画芸術』ベスト10作品(予定)
話はマエアツさんと染谷将太の同棲アパートからはじまる。バンドマン、マエアツさんはギターのひきがたりをしながらブルー。インディーバンドのヴォーカルであるマエアツ、メジャーからスカウトされているのだが、「バンドは要らない。デビューはきみ一人」と言われて「仲間を裏切るみたいで……」と悩んでいるのであった。もうひとつの悩みはセックスレス。
「ねえ~しよ!」
と染谷くんに明るく声をかける。ってカンチかよ! いやそれだけじゃなくいろいろ恐ろしい。そもそもマエアツさんに「しよ!」って言わせて女優開眼とか、『Wの悲劇』で薬師丸ひろ子がブラもはずさない濡れ場を演じて、翌日「何かはさまってるみたい」とガニ股で処女喪失を示して演技開眼と名乗ったのに匹敵する凄さ。というかこの話『Wの悲劇』のころから何ひとつ変わってない。荒井晴彦先生の頭の中はどうなっているのか。いまどきインディーからメジャーに「スカウト」されてメンバー交代とかなんとか。このアナクロニズム、少女漫画レベルのメルヘン歌舞伎町ロマンと言わざるを得ない。
そんなわけでバンドの練習に出かけるというマエアツさんと二ケツで自転車に乗り、染谷くんが向かうのは歌舞伎町のラブホテルHotel Atlas 。 染谷くん、マエアツさんにはお台場の一流ホテルで働いていると嘘をついて、ラブホの店長をつとめているのであった。そこはさまざまな人々の思いが交差する人間交差点ホテル二十四時。
ホテルで清掃員として働く鈴木さん(南果歩)はアパートで同棲中だが、一緒に住んでいる男(松重豊)の存在は大家にも隠している。一匹の魚を二人でわけ(大家がゴミチェックをするらしい!)、宅配便が来たら押し入れに隠れる。不満を抱える男だが「あと三十七時間だから、我慢しようよ」と諭される。何やら犯罪をおかして逃亡中、まもなく時効ということらしい。
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