柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『悼む人』 狂気を突き詰めていれば異形のカルト映画ができあがるのかもしれなかったが、堤幸彦にそんな根性は望めない (柳下毅一郎) -3,621文字-

映画『悼む人』公式サイト 2015-03-02 14-44-52

 

悼む人

監督 堤幸彦
脚本 大森寿美男
撮影 相馬大輔
音楽 中島ノブユキ
出演 高良健吾、石田ゆり子、大竹しのぶ、椎名桔平、井浦新、貫地谷しほり

 

face悼む人 原作は天童荒太、第140回直木賞受賞の大ベストセラー小説。これがどういう話かと言うなら、新聞を読んでは事件や事故で死んだ人を探し、その現場に行ってはポーズを作って「悼む」人(ちなみに悼みポーズとは片膝をつき、右手は天を差し、左手は地をさらう動作から両手を胸の上で十字に組み合わせる「……そんなあなたが生きていたことをわたしは覚えておきます」これであなたもいつでも悼めます!)の話である。いやそれ普通に危ない人だろ、てかそんなの映画になるの? と思ったあなたは正しい。さすがにこれが危ない人だろ!というのは天童荒太もわかっていたらしく、静人くんは「なんでそんなことをするんだ?」と問われると「……病気だって言われますよ」と自嘲気味に答えるのだった。どう考えてもまともでない静人くん。だがこの話においては静人くんは特別ではなく、出てくるのは彼以上に不幸か異常な人ばかりなのだった。

さて、この映画、三つの話が並行して進んでいく構成である。ひとつは静人くんを追いかける戯画化されたルポライター(椎名桔平)の話。もうひとつは夫殺しの罪を背負った女(石田ゆり子)。夫を殺した現場に戻ったところで死を「悼み」に来た静人くんと出会うことになる。三つ目は末期癌を患っている静人くんの母(大竹しのぶ)の述懐。石田ゆり子は静人と同行することになるのでまだからむのだが、椎名桔平と大竹しのぶに関してはほとんど静人は狂言回しのような役回りになる。考えてみれば当たり前で、リュック背負って日本中を野宿しながら放浪している狂人(ところで彼が「悼む」相手をどう決めているのかさっぱりわからなかったんだが、やっぱり新聞を見て適当に目についた人に執着しているだけなんだろうか? まあ狂人ってそういうところいい加減だからな)が主人公になるわけがない。確信犯的な狂人は変化しないのだからドラマを生まない。むしろ彼と出会ってしまった人間が人生を揺るがせられるのだ。原作小説は基本的にはそういうかたちになっている。ところが堤幸彦は何を考えてるのかそれを無理矢理ドラマにして、しかも感動させようとするもんで……

 

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tags: 井浦新 堤幸彦 大竹しのぶ 木下工務店 椎名桔平 直木賞 石田ゆり子 貫地谷しほり 高良健吾

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