『ジュピター』(2015/米) ウォシャウスキー姉弟、実はラブコメの方が向いてるのでは [♪akiraのスットコ映画の夕べ] -3,632文字-
『ジュピター』(2015/米)
監督 : ウォシャウスキー姉弟
出演 : ミラ・クニス、チャニング・テイタム、エディ・レッドメイン
アメリカ人青年マックス(ジェイムズ・ダーシー)は、ロシアを訪れた際に現地の女性アレクサ(マリア・ドイル・ケネディ)にひとめぼれし結婚した。星が好きだった彼は、生まれてくる子どもにジュピターと名づけるのを楽しみにしていたが、ある晩家に強盗が押し入り、天体望遠鏡を守ろうとしたために撃たれて死んでしまった。親類一同と船でアメリカに渡る途中、アレクサは娘を産む。
それから十数年。シカゴで育ち年頃となったジュピター・ジョーンズ(ミラ・クニス)とロシア系親族一同は、裕福な家庭の掃除を請け負っていた。毎朝目覚ましとともに明け方に起き、来る日も来る日もトイレ掃除の人生(ちゃんと毎回服装が違うという姉監督のこだわり)。不服を言おうものなら「お前は頭が良すぎるんだよ! だから嫁のもらい手がないんだ!」と昭和なセクハラをかます叔父。
遠く離れた宇宙では王家のお家騒動が勃発。女王殺害により、アブラサクス家の長男バレム(エディ・レッドメイン)、長女カリーク(タペンス・ミドルストン)、次男タイタス(ダグラス・ブース)の間で、貴重な資源の供給元である地球の継承権を巡り、醜い争いが始まらんとしていた。女王亡き後、地球は長兄が管理していたが、女王と同じ遺伝子を持つ女性が地球にいることが発覚。正当な所有権を持つその女性を手に入れ、莫大な利益をものにせんと三人三様に策を練る。
ある日ジョーンズ家の留守中に男が忍びこむ。出生証明書を調べていたケイン(チャニング・テイタム)というその男は、タイタスに雇われて宇宙から来た凄腕の傭兵だった。やはり地球にやってきた賞金稼ぎの男女3人組(ペ・ドゥナと他2人)は、ケインを取り逃がしてしまう。
金持ちの友人キャサリンと部屋にいたジュピターは、彼女がいきなりグレイ型っぽい宇宙人たちに襲われるのを目撃! 大変!!と急いでiPhoneで写真を撮る!!! いや、そうじゃないだろう! 「あれ? これ探してた奴と違うかも?」と気づいた宇宙人たちは突如撤退。と同時に2人の記憶も消されていた。
天体望遠鏡が欲しいジュピターは、いとこの口車に乗り卵子を売ってお金を稼ごうとする。不妊治療クリニックの医師たちに化けたのは、キャサリンを襲った宇宙人だった! 遺伝子が符合したため殺されそうになるその瞬間(ここ大事)、イケメンマッチョのケインが助けに来た!! 宇宙人たちを蹴散らし、ジュピターをお姫様だっこし、反重力のホバーブーツで空を飛び、宇宙船との戦闘で車やビルを壊しまくって追っ手たちをまいたケイン。驚くジュピターに、彼女が宇宙の王族の継承問題に巻き込まれていると告げる。ケインは、かつては兵士だったが王家に逆らい投獄されたため傭兵になった、人間と狼がかけあわされた種だという。<まさかの『トワイライト』!ラナ姉はジェイコブ推しか!?
盗んだ車でシカゴの街を抜け出した2人。「持ち主に連絡した方がいいんじゃない?」などと、宇宙人シカゴ大破壊よりも窃盗容疑が気になるジュピター。しかし「見てみろ。壊れた街が復活してるだろ?」と、言われて見たところ、黒煙が上がっていたビルはあっという間に元どおりになりかけていた…って、都合よすぎ! 安心したジュピターは、ケインの胸の傷に気づく。グラブコンパートメントをごそごそやっていると、「あらー、車の持ち主、女性で良かったわ!」と、いきなり生理用ナプキンをケインの傷にくっつけるジュピター!!! 「お、おい!まさかそれって!」と慌てるケイン。一瞬にして地球に来られる科学技術をもってして、いまだに21世紀のブツと同じ! おまけに夜用かってぐらいデカい! しかし何より問題なのは、それ、ノリのついてる方ですから!!
と、女性観客の大多数がどうでもいいことに熱くなっているであろう間にたどり着いたのは、スティンガー(ショーン・ビーン)のボロ家。かつてはケインの上司だったが、部下をかばって懲罰を受け、娘と地球でほそぼそと暮らしていた。会うなりつかみ合いのケンカを始める2人を見て、「あーほんと仲いいんだから」と、イチャイチャぶりに冷静な娘。そんな父子に「陛下」と呼ばれてとまどうジュピター。
しかし追っ手はすぐそこまで来ていた。ケインらの必死の攻防も空しく、賞金稼ぎ3人組に出し抜かれてしまう。トウモロコシ畑に『サイン』そっくりなクロップマークを残して地球を去る彼らの宇宙船にしがみつき、こっそり乗り込んだケイン。
3人組の雇い主は、やけに乾燥肌のカリークだった。超キラキラの城内に親しげに迎えられ、自分そっくりの立像を見せられたジュピターは、自分がその女王と同じ遺伝子を持つ人間だと教えられる。「私、いくつに見える?」「そーねー、40代後半?」と、お肌の調子から判断した、妙にリアルな会話をする2人。突然カリークはお風呂に入り、出てくるとお肌すべすべに若返っていた。さっきの会話が通販化粧品のCM調だったのはこのせいか!(たぶん違う)
この国はやたらとお役所仕事が厳しいらしく、女王になるには山のような書類申請が必要だった。無事着いたケインを連れて役所内をたらい回しにされるジュピター。これって、姉監督が性転換した時に手続きがめちゃくちゃ大変だった!ファック役所!とかそういうメタファーなんでしょうか。無事手続きが終わったジュピターは、余裕が出てきてケインにアタック開始。「犬族の自分はとても陛下には」というケインに、「あら、私、犬って大好き!」とかましてスルーされたジュピターの、あーもう私ってば!という切ない表情は、この作品中一番(というか唯一)の見所だったと思います。ウォシャウスキー姉弟、実はラブコメの方が向いてるのでは。
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