柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『私の奴隷になりなさい』 〜ポルノの観客に向けられた刃(やいば)

 

『私の奴隷になりなさい』
監督 亀井亨
脚本 港岳彦
出演 壇蜜、真山明大、板尾創路、杉本彩(特別出演)

 

舞台挨拶ではパンツ生脱ぎして客席に投げたという壇蜜である。

凄すぎる。

求められるものを完璧に把握し、それを的確に提供する頭の良さと度胸。彗星のように登場した三十路のグラドルと話題になったが、これなら売れるのも当然である。絶好調の状態で登場したのが『私の奴隷になりなさい』。シネパトスのスターはきみだ!

 

劈頭一番、真山明大演じる「僕」はトイレでガールフレンドとセックス中。飲み会からこっそり抜けてトイレで手早く一発らしい。終わると彼女に因果をふくめてさっさと帰らせ、そのまま一緒に飲んでいた先輩の彼女の手を握り「抜け出しませんか……?」そのまま家に持ち帰って一発。なんという性獣ぶり。

そんな「僕」だけに転職した出版社の宣伝部の先輩香奈(壇蜜)を見るやいきなり発情して押しまくり。歓迎会でも他の同僚には目もくれず「香奈さんどこに住んでるんですか?」と下の名前で呼んで親しさをアピール。同僚たちから「彼女結婚してるよ」とたしなめられようとも気にも留めない。壇蜜もさすがにうんざりして、ジト目で「あなた、仕事覚える気あるの? いつもそうやって女ナンパしてきたんでしょうけど、そういうのあ、あたし嫌いだから」と冷たく言い放つ。

つまり、ここまで、主人公はまったく好感の持てないクソ野郎で、仕事もロクにできない薄っぺらなヤリチンだという描写が徹底しているのだ。特技はイラストで、エドワード・ゴーリーの模写が得意。まったく薄っぺらい男なのである。

だから、ある日、にもかかわらず壇蜜から送られた「今夜、セックスしましょう」というメールを受け取った主人公の狼狽ぶりがリアルだと観客にも思えるわけである。なんだかわかんないけどラッキー!と思った「僕」だったが。

 

うきうき気分でホテルに出かけると、いきなり壇蜜からビデオを渡される。「これでわたしのこと撮って。後でこれ見てオナニーするから」普通に愛あるセックスをするつもりだった「僕」だが、慣れないハメ撮りに困惑。カメラはつねに壇蜜の顔に向けねばならず、ちょっとでもずれると「ちゃんと撮ってよ!」と怒鳴られるので、ちっとも集中できない。キスももちろん許されない。まったく楽しくないまま放出だけさせられ、不可解な思いを抱えたまま帰る「僕」。一度やった仲だからと声をかけようとしても、会社ではとりつくしまもない。そんな感じで悶々とした日々を過ごしていると、またしても唐突に「じゃあ、今日フェラチオしてあげる」舞い上がった「僕」だが、「僕」の家にやってきた壇さんは「じゃあ」とビデオを渡し、さっさとフェラチオだけ事務的にこなして帰ってゆくのだった……

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tags: 亀井亨 壇蜜 杉本彩 板尾創路 真山明大

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