柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『グラスホッパー』 小説では許せるご都合主義が自堕落きわまりない脚本に転じる瞬間。ブラックコメディにもゲーム感覚にもならない・・・これが日本映画なんだなあ (柳下毅一郎)

FireShot Screen Capture #048 - '映画『グラスホッパー』公式サイト' - grasshopper-movie_jp

 

 

グラスホッパー

監督 瀧本智行
脚本 青島武
原作 伊坂幸太郎
撮影 阪本善尚
音楽 稲本響
出演 生田斗真、浅野忠信、山田涼介、菜々緒、村上淳、石橋蓮司、金児憲史、宇崎竜童、吉岡秀隆、麻生久美子、波瑠、佐津川愛美

 

グラスホッパー face 日本映画を見るたびに、日本のベストセラー小説への信頼をなくしていることはすでに何度か述べているとおり。さて、伊坂幸太郎である。このベストセラー作家についても、ぼくは映画化作品しか見たことがなくて、見るたびに「……これが日本のエンターテインメントの現状なのか!?」と頭を抱えずにいられなかったのである。しかるに本作、伊坂幸太郎本人が「今まで書いた小説の中で一番達成感があった」という。うーん、い、いやその小説の中身がどれほど映画への脚色の中で残ってるのかわからないんですが……

さて、お話はハロウィンの渋谷スクランブル交差点ではじまる。

仮装した若者であふれた交差点に、危険ドラッグに酔った若者が車で突入。多数の死傷者を出す事件が発生する。その事件で婚約者をなくした高校教師鈴木(生田斗真)がスクランブル交差点の現場で嘆き悲しんでいると、目の前に紙が落ちてくる。

「事件の真犯人はほかにいる。フロイラインの寺原親子を調べろ」

は? というわけでキャッチセールスの会社に潜入した鈴木、いきなりギャルに捕まる。

「あー、科学の鈴木じゃーん。何やってんのー?」
「えーきみ教え子……だっけ?」
「何言ってんのー? あーひょっとして学校クビになったんだー。だっさーい!」

と事務所に勝手についてくる。「ここの商品、インチキだから買わないほうがいいよ」とこっそり耳打ちするも、出されたお茶を飲んでばったりぶっ倒れるギャル。

「あれ……?」

「薬をもったのよ。そういうの、ボスの寺原ジュニアが好きだから。あんたもそろそろわかってるでしょうけど、うちはカタギの会社じゃないのよ。いい機会だから、ボスに会っておきなさい」とケバい女上司(奈々緖)に命じられ、気を失ったギャルを縛って車に積み込む鈴木。いよいよ真犯人に会えるのか……?

一方そのころ渋谷の某ホテル。殺し屋の鯨(浅野忠信)がターゲットの男にせまる。

「おれを殺す気なのか!」
「いや、おまえは自分で死ぬ……おれの目を見ろ」

そう、鯨は睨んだだけで相手を自殺に追い込めるスピリチュアル系殺し屋だったのである。

「自分の中の罪を思い出せ」

と言われた男はすらすら思い出して

「ハロウィンの日の暴走事件は寺原親子の企みなんだ。彼らは危険ドラッグを使った事件を起こして危険ドラッグへの取り締まりを強化させ、自分たちで市場を独占して大もうけするつもりなんだ」

……と鈴木が喉から手が出るほど知りたかった情報をいとも簡単に吐いて首を吊る犠牲者。

「死ねば罪は消える……」

いやしかしそもそもこの計画いろいろ無理ないかね……?

 

443f2910ab9081e6c5fb7aa8c00ee84d2

(残り 1842文字/全文: 3018文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

tags: 伊坂幸太郎 佐津川愛美 吉岡秀隆 宇崎竜童 山田涼介 村上淳 波瑠 浅野忠信 瀧本智行 生田斗真 石橋蓮司 稲本響 菜々緒 金児憲史 阪本善尚 青島武 麻生久美子

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ