柳下毅一郎の皆殺し映画通信

『ピン中!』 フィリピンパブに行くのはダメ人間だけ、というメッセージのみは強く伝わってきた(柳下毅一郎)

 

ピン中!

監督 金沢勇大
脚本 松久育紀、金沢勇大
製作総指揮 影山龍司
撮影 押尾英木
音楽 谷地村啓
出演 柳沢慎吾、コトウロレナ、田代絵麻、巻野わかば、大久保鷹、五代高之、田中要次

 

face フィリピン中毒、略して“ピン中”新宿区歌舞伎町のとあるフィリピンパブに集う“ピン中”のおっさんとフィリピーナの人間模様を描く映画である。いやいったい誰に向けてこういう映画企画してるんだよ……という疑問が浮かんでくるわけだが、この映画の場合はまず第一にフィリピーナを愛するおっさんたち、第二に当のフィリピーナたちだろう。その証拠にわざわざ英語字幕つきの上映で、実際妙齢の美女とおっさんのカップルが見受けられて場内立ち見の大盛況。いや一日一回の上映で映画サービスデーだし映画館は新宿だしで、おそらくいちばん混む回だったんだろうとは思うが、それでも立ち見はちょっとびっくりした。しかしそれならなおのこと、なんでこんな映画を作るのかね。これ見てフィリピンパブ最高!って思う人がどこにいるっていうのか。

なお、企画自体は製作総指揮の影山龍司が主導したと思われるのだが、この前後にゴールデン街少年映画『SHADOW KIDS』やら『風の又三郎』女体化という『リトルパフォーマー 風の鼓動』やら立てつづけに製作映画が公開され、時ならぬ影山祭りに。それでこの人いったい何者なの!?! 映画は懐かしや柳沢慎吾主演である。

 

 

新宿歌舞伎町のはずれフィリピンパブ「フィエスタ」で黒服として働く宇田陽一(柳沢慎吾)は、かつては一流企業の営業サラリーマンだったらしいが、ある日キャバクラに行こうと後輩に誘われ、ふと横を向いたところでものすごくわざとらしい泣き真似をしている新人ピンパブ嬢ジェーン(コトウロレナ)を見かけて、ふらふら……と魅入られるように「フィエスタ」に入ってしまう。そこでせがまれるがままに『冬のリヴィエラ』をデュエットしたことからすっかりハマってピン中に。しまいに会社もやめて(クビになり?)家からも追い出されてジェーンのところに転がりこんでいる。仕事もないのでなかばおしかけのようにして「フィエスタ」で雇ってもらっている……らしい。時系列的にはピン中→仕事クビ→フィエスタ→家から追い出される→ジェーンと同棲となったことになるはずだが、いずれにせよピンパブにはまってまっさかさまの転落人生。ジェーンとはラブラブだがもちろん店の女の子には手出し厳禁なのでバレたらやばい関係である(てかそんな男をなぜピンパブ側も雇うのか)。ちなみにジェーンはナンバー3のマリンと同居中なので、マリンが寝ているふすま一枚挟んだ隣で「レイプしちゃうぞ!」と柳沢慎吾にまたがるバカップルぶりを大いに発揮している。

一方のマリンには五年前から通ってくる太い客鈴村がいる。延々貢ぎ、デートに誘うものの、マリンにとってはただの金づる。

「ねー、スズさん、今度、フィリピンで豚の養殖やるのよ。そのお金が欲しいんだけど……二十万円欲しいの」
「えー、いいけど……こないだはエビの養殖やるって言ってなかった?」
「あーあれは駄目になった。でも今度は豚だから絶対ダイジョブ」

 と金を引き出すだけだしてキスもさせない。一方、顔はそんなに可愛くないが性格はいいミアには加藤(大久保鷹)という常連老人客がついており、二人仲良くほのぼのと店外デートなどしている。ジェーンに金を注ぎこむのは阿住というピンパブのベテラン。金払いはいいのだがセクハラも人一倍で、ジェーンは閉口しっぱなし。

「もう嫌よ! なんでほっとくの!? ジェーンのこと愛してないの?」

 と文句を言われても「でも金払いいいからねえ」と何もしてくれないママ(と柳沢慎吾)。この映画の柳沢慎吾、実にまったく何もせずとことん受け身。ひたすら右往左往するコメディ演技は柳沢慎吾の得意とするところなのかもしれないが、この映画だとたんなる駄目人間というだけだよなあ。柳沢慎吾、ジェーンから「結婚して!」と言われても「いやその……」と歯切れが悪い。「ジェーンとインラブじゃないの!?」実は家を追い出されたものの、妻とは離婚していないままの柳沢慎吾。まったくもってダメ男すぎる。

さらに金を使わないのにイケメンだからモテまくる遠山という客がいるのだが、この男実は入管職員。こっそり手入れ情報を店に流してお礼をもらっている……ってそれは普通に汚職だろ! この映画、ピン中の客たちは柳沢慎吾を筆頭にダメ男とクズばかりで、現実のピン中にとってもちっとも優しくない。じゃあそんなダメ男たちを優しく支えるはずのフィリピーナはというと……

 

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