『シュウカツ』 ブラック企業の圧迫面接を前にした学生の苦闘・・・生き残った学生の智慧からどんな教訓を得ればいいというのか(柳下毅一郎)
→公式サイトより
『シュウカツ』
製作・監督・脚本・編集 千葉誠治
撮影 吉田淳志
音楽 諸橋邦行
出演 桜田通、渡部秀、廣瀬智紀、横浜流星、戸谷公人、肘井美佳
「ブラック企業vs5人の学生」「密室の会議室で繰り広げられる究極の就職試験!連続して繰り出される難問をクリアできる学生は……」ということでブラック企業の圧迫面接を前にした学生の苦闘を描いたオムニバス形式の就活映画の登場である! ってあのなあ……そもそも就活をテーマにした映画自体別にはじめてではなく、91年には早くも名匠金子修介の監督・脚本で『就職戦線異状なし』が作られている。すでにとっくに手垢のついたテーマなのである。それを映画にしようとなって、舞台は面接。就活学生とブラック企業の面接官が丁々発止のやりとりをくりひろげる……ってなんでそんな会社に入らなきゃならないんだよ! 前提がそもそもおかしいだろ! ブラック企業が世間の話題になってるから映画にでもしてやろう……という安易な発想でスタートしたのはいいが、考えてることはいかに安く映画をでっちあげるかってだけ。この映画の場合、若い(イケメン)俳優がスーツを着て就活生を演じ、それに対して面接官が出てくるだけ。撮影場所はただの会議室。セットなし、小道具なし、衣装最小限。俳優も数えてみたらひいふう……全部で13人しか出てこなかった! いったいいくらで作ったんだよこの映画! そこらへんの自主映画のほうがよっぽど金もかかってるし頭も使ってるよ! 製作監督は『エイリアンvs忍者』の人だが、まだあのほうがなんぼかマシだったんじゃないかと……頭使わないならせめて身体動かそうよ……
第一話(一次面接)は「見えない相手」。IT企業の最終面接に挑んだ学生(戸谷公人)。だが面接室に入ると誰もおらず、そこにはカメラとモニターがあるだけ。モニターの向こうにいる相手は
「カメラに向かって喋ってください。あなたが当社に何をもたらしてくれるのか。あなたのプレゼンテーションはネットで流して当社の有料会員で投票します。最高得票の方に内定を出させていただきます」
そんなもん炎上するに決まってるじゃないか……
「それを切り抜けるスキルこそ、ネット社会で生き残っていくためには必要なんじゃないですか…?」
と切り返されて「やらなければ入社できませんよ、どうします?」と迫られるというのだが……いや、そんな会社なんで入らないといけないの?と思ったら学生側が「お断りだ!この一件はネットで公開するからせいぜい炎上してくれよ!」とお断りしておしまい。なんだこれ……
これよりさらにつまらない第二話(最終面接だと思っていった学生が「内定出してるから」と言われて、「内定辞退するなら採用費用もろもろ請求するよ!」と脅されるという無理筋にも無理過ぎる話)の次、第三話は「生き残り」。最終面接に臨む学生(廣瀬智紀)を面接官(肘井美佳)が思いもよらぬ質問を投げる。
「前回の面接が終わったあと、あなたは最寄りの駅から地下鉄に乗り、前から二両目に乗りましたね。そのとき、あなたの目の前に老婆が立ちました。あなたは優先席に座っていたにもかかわらず、ご老人に席を譲りませんでしたね。なぜですか?」
いやちょっと待て! なんでそんなこと知ってるの&とがめられなくちゃならないの!? という間もなく
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